2012 Fiscal Year Annual Research Report
感染症媒介節足動物に備わる感染防御機構「トレランス」に関するメカニズムの解明
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12J00987
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横山 卓也 北海道大学, 大学院・生命科学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | トレランス / コクヌストモドキ / 小形条虫 / 条虫 / 寄生虫 / 中間宿主 |
Research Abstract |
マラリアやバベシア症は節足動物(ベクター)によって媒介される人獣共通感染症である。この病原体媒介節足動物には極めて興味深い生命現象が存在する。それは、病原性微生物を体内に有するにも拘わらず、自身は病気にならないという点である。私は新たな病原体媒介動物モデルとして、ヒト感染性条虫と中間宿主昆虫の相互作用解明を目的として、小形条虫と甲虫コクヌストモドキによる感染実験モデルを確立した。この条虫-昆虫中間宿主の相互関係に関与している昆虫の遺伝子を探索するため、私はRNA干渉スクリーニングによる逆遺伝学的アプローチを試みた。本年度はコクヌストモドキへのdsRNAインジェクションの手技の習熟につとめた。次にdsRNAインジェクションによる機能欠失変異体に小形条虫を直接摂食させ、10目後に小形条虫の体腔に存在する擬嚢尾虫をカウントすることで遺伝子の評価を行った。現在までに昆虫の生体防御機構に関与するシグナル伝達経路(Toll, IMD, JAK/STAT, JNK等)、RNA干渉に関与する遺伝子群(Dicer-2等)、ストレス誘導性MAPK経路(p38等)をターゲットにおよそ50種類の遺伝子のスクリーニングを実施した。その結果、JAK/STAT経路の(Hopscotch, STAT)遺伝子の機能を抑えると、小形条虫感染後にコクヌストモドキの30%が死亡するという表現型を確認した。しかし、生存しているコクヌストモドキからは擬嚢尾虫の感染が認められた。この結果は、JAK/STAT経路が病原体の排除(レジスタンス)ではなく、病原体による宿主側へのダメージの低減(トレランス)に関与する事を示唆する。これは、コクヌストモドキがトレランスにより条虫感染のダメージを最小限に抑えているがために、ヒト感染性の条虫の中間宿主となり得ていることを予測させる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
媒介昆虫のトレランスをより一般化するため、新規の感染系を用いた実験を開始した。感染系の樹立、遺伝子機能欠損昆虫の作成法といった技術の習得から開始したたにも関わらず、当初の想定よりも多い約50種の遺伝子のスクリーニングを終了できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)JAK/STAT経路によって付与されるトレランスの実態の解明 JAK/STAT経路による条虫感染に対するトレランスが、条虫感染状態のどの様な現象とリンクするのかを明らかにする。今年度は条虫感染に対する第一のバリア機構である、中腸における宿主応答に注目する。六鉤幼虫の中腸通過による中腸へのダメージを傷害性因子の動態を(発現量の変動、蛍光抗体によるイメージング)元に評価する。 2)条虫感染時にJAK/STATの下流で動作する遺伝子の同定 条虫感染時、JAK/STAT経路が関与して惹起されるJAK/STAT経路の下流で作用する遺伝子の網羅的探索を行う。次世代シークエンサーを用いたRNA-Seqが有効かつ効率的である。小形条虫を感染させたJAK/STAT経路欠損したコクヌストモドキからRNAを抽出し、未感染群のRNAとの発現量の比較を行う。変動遺伝子を抽出し、配列の相同性からそれらの機能とそれらが関与する宿主応答を推定する。
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