Research Abstract |
本研究の目的は,身体機能と身体組成情報に基づき,より要介護状態に近い虚弱高齢者をスクリーニングできる評価指標を開発することである.本目的を達成するために以下の3つの研究課題を設定した.1虚弱高齢者の身体機能の特徴の把握,基本チェックリストの妥当性・有効性の検討,2.虚弱高齢者の身体機能と身体組成の関連性の検討,および身体組成の基準値(カットオフ値)の検討,3,身体機能と身体組成に基づく,虚弱高齢者を抽出するためのスクリーニング指標の作成1年目では課題1および2を遂行した. 【課題1】要介護状態に陥る恐れのある虚弱高齢者に対して効果的な支援をおこなう上で,その身体機能の特徴を把握することは非常に重要である.課題1では,元気高齢者および要介護高齢者との比較から,虚弱高齢者の身体機能の特徴を検討した.結果,虚弱高齢者の身体機能は元気高齢者と要介護高齢者の中間に位置しているが,そのばらつきは大きいことが示された.虚弱高齢者はそのカテゴリーの中で再評価が必要と考えられる,【課題2】要介護状態に陥る恐れのある虚弱高齢者に対する効果的な支援をおこなう上で,その身体組成の特徴を把握することは非常に重要である.課題2では,元気高齢者および要介護高齢者との比較から,虚弱高齢者の身体組成の特徴を検討した.結果,体重補正した全身筋量は虚弱度が上がるにつれ少なくなる傾向に,体重補正した全身脂肪量(体脂肪率)は,虚弱度が上がるにつれ高くなる傾向にあった.これらのことから,高齢者の身体組成の特徴は,虚弱度が進むにつれ少ない筋量で多くの脂肪を支えている,いわゆる sarcopenic-obese状態にある傾向が示唆された.また,要介護高齢者に至る筋肉量の基準値(カットオフ値)を検討したところ,補正なしの全身筋肉量においてarea under the ROC curve (AUC)が0.693と最も高く,要介護高齢者に至る全身筋肉量の最適なカットオフ値は,31.5kg(感度:68.4%,特異度:69.1%)であった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ収集・分析は順調であり,研究課題1は学会発表,論文受理,課題2は学会発表をしており,成果を残している.研究課題2のカットオフ値の検討では例数を増やしたり,縦断研究をおこなったりするといった新たな課題も見えたため,「(2)おおむね順調に進展している」との評価とした.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,研究課題3を進めていく.課題3では,課題1,2で収集したデータをもとに,身体機能と身体組成の情報に基づき,より要介護化のリスクの高い虚弱高齢者をスクリーニングする評価指標を検討する,指標の検討には,ロジスティック回帰分析を用い,身体機能,身体組成の各項目やその組み合わせの該当に対する要介護状態へのオッズ比を算出する.また,課題2で検討した身体組成(筋肉量,脂肪量)のカットオフ値の交差妥当性を検討するとともに,対象者を増やすための横断データ収集も引き続きおこなっていく.
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