2013 Fiscal Year Annual Research Report
ベルリンにおける占拠運動からみた対ジェントリフィケーションに関する地理学的研究
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12J01040
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
池田 真利子 筑波大学, 大学院生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ベルリン / ジェントリフィケーション / 文化施設 / アーティスト / テンポラリーユース / 都市変容 / 国際情報交換 / ドイツ |
Research Abstract |
本研究目的は, EU諸国の政治・経済的中枢を担うドイツ連邦の首都ベルリンを対象とし, 特にインナーシティにおいて顕著にみられるジェントリフィケーションの動態と, それにより引き起こされる住民の抵抗運動を, 社会経済・文化歴史的コンテクストに着目しつつ多面的に明らかにすることである. 平成25年度は, シュプレー川沿岸域における開発計画「メディアシュプレー」の策定経緯と, それに対抗する市民運動に関する調査を進めた. なお同開発計画は, 河岸部約3.5haに及ぶ大規模な開発計画であり, メディア関連の文化産業を誘致する目的があった. 同開発計画地は政治転換期以降以下の3点からアーティスト・市民主導による文化的利用がなされていた. まず, ①旧東西境界域であるために, 老朽化した建築物(アルトバウ)や産業・工業遺産群が放置され残存していた点, ②旧東ドイツ領であったため所有権の所在が不明確であった点, ③こうした未利用地において文化・創造的利用が積極的になされていた点である. 特に統一以降の区画整備復元を伴う地権者の確定には時間を要し, こうした状況下において, 1990年後半以降には一時的な土地利用方法としてテンポラリーユース(Zwischennutzung)が行政仲介のもと利用されていった. テンポラリーユースは, 地権者と土地利用希望者が期間限定的に賃貸契約を結ぶことにより合法的かつ効率的な土地利用を促す土地利用形態である. なおテンポラリーユースは, 利用希望者のみならず地権者にとっても税の負担減少や資産価値の維持など利点があったことから, 1990年代後半以降ドイツにて積極的に利用され始めた. 本年度は, テンポラリーユーザー(文化施設・市民団体)に対する聞取り調査から, 利用経緯やベルリン都市政策, およびシュプレー川沿岸域における開発計画の変遷に焦点を当てることにより, 2008年および2013年に活発化した市民運動の発生要因が明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成25年度はブレーメン大学地理学教室教授Lossau氏への研究指導の委託のもと, 長期滞在と調査を行った. これにより, 聞取り調査・資料収集を大幅に進めることができた. なお, 平成25年度の調査内容は, 2014年3月の日本地理学会大会にて報告済みである.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度には, ジェントリフィケーションに関する調査の一部として, 旧西ベルリン地区に位置したノイケルン地区のロイターキーツを対象に, 文化・芸術と密接な関連をもつ新たな商業施設経営形態と都市更新の関連性に焦点を当てつつ研究を進めていく予定である. なお, 行政機関(Zwischennutzungsagentur, Quartiermanagement)への聞取り調査により, 定量的なデータを得られることを期待している. なお, ロイターキーツの土地利用調査と平成26年度の予備調査となる聞取り調査を2013年10~12月に行った. なお, 同調査は2014年5月~7月に実施予定であり, 研究成果を2014年8月IGUポーランド大会テーマ別セッションで発表(査読済)する.
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Research Products
(3 results)