2012 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性錯体ネットワークを利用したイオン伝導の自在制御
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12J01150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅山 大樹 京都大学, 物質-細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多孔性配位高分子 / プロトン伝導 |
Research Abstract |
プロトン伝導体は固体高分子形燃料電池で中心的な材料の一つであり、特に100度以上の無加湿条件で高い性能が求められている。一方、多孔性金属錯体(Porous Coordination Polymer, 以降PCPと呼ぶ)はそのような期待に応えうる材料の一つである。PCPとは種々の金属イオン・有機配位子からなる結晶性の多孔性物質であり、細孔の形状、化学特性を金属や有機物適切な配置によって制御できる。今年度報告した材料は亜鉛(Zn2+)とリン酸からなる配位結合ネットワークを形成している。このネットワークとイミダゾールを組み合わせて錯体ポリマーを合成し、150度・無加湿で10・4~10-3Scm-1の伝導度を錯体単一相で実現した。実際燃料電池システムに組み込むことで、約0.8Vの安定した起電力が得られることも確認した。 単結晶X線構造解析によると、一次元錯体ポリマー中でイミダゾールが高密度かつ規則的に配列し、それらが相補的にプロトンをやり取りすることでホッピングによる伝導が可能である。また伝導度は70度付近で急峻に上昇する。このイオン伝導の相転移挙動もX線解析によって捉えられており、錯体ポリマー中のイミダゾールの面内回転運動がディスオーダーとして観測された。つまり温度を挙げることでイミダゾールの回転運動が急激に促進され、プロトンの輸送を活性化していることがわかった。 さらに温度を上げるとこの材料は160度付近で融解し、錯体ポリマー構造が分解することなく、粘性の高い液体となる。この固液相転移は錯体ポリマーとイミダゾールの高いイオン性によって可能になったと考えられる。一度融解すると、過冷却により常温でも可塑性を有し、他の固体材料との複合化や成形が可能である。現在はこの性質を利用した薄膜化も検討中である。この特徴は、燃料電池を始めとした様々な複合システムに組み入れる際の大きな利点となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画とは異なる方向に打開策が見出されたものの、それをきっかけに多くの論文を発表できたため。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに報告した錯体の水素結合ネットワークは複雑であり、X線回折によって得られた構造から一意にプロトンの伝導パスを決めるのは困難である。今後は単結晶の中性子回折測定によってプロトンの平衡位置・温度因子の厳密な決定も試み、高くても10^<-3>S/cm程度にとどまっている伝導度の底上げを図る。
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Research Products
(6 results)