2013 Fiscal Year Annual Research Report
多孔性錯体ネットワークを利用したイオン伝導の自在制御
Project/Area Number |
12J01150
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
梅山 大樹 京都大学, 物質―細胞統合システム拠点, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多孔性錯体 / プロトン伝導 |
Research Abstract |
本研究では外部刺激に応答するイオン伝導体の開発を目指し、錯体集積体の持つ高い分子設計性を活かし、構造内に外場との相互作用空間を持たせることに成功した。これにより外部刺激によるプロトン伝導度の人為的な制御が可能となった。 応答型プロトン伝導体は亜鉛イオン、リン酸、ベンゾイミダゾールから成る錯体集積体であり、乳鉢を用いた固相反応によって簡単に合成できる。X線による構造解析の結果、構造中にかさ高い分子であるベンゾイミダゾールを持つことで、プロトン伝導能と同時に相互作用空間を保持していることが明らかとなった。この錯体のプロトン伝導能は構造中のリン酸部位とベンゾイミダゾールによって発現しており、低温領域ではリン酸、高温領域ではベンゾイミダゾールが主要なプロトン伝導経路であることが固体NMRによって明らかになった。構造中に存在する相互作用空間は外部から特定の分子を取り込むことができ、気体のメタノールを選択的に内包する。メタノールの吸着量は外圧によって制御でき、これによってプロトン伝導度を最大で24倍まで変化させることに成功した。2次元NMRによる詳細な解析の結果、メタノールは構造中のリン酸基と相互作用していることが分かり、リン酸基上の伝導経路に対して余剰なプロトン供与、受容サイトとして働くことが分かった。 現在は錯体の持つ相互作用空間により極性の高い分子を導入することで、外部電場の印加による伝導度のスイッチングを検討中である。また、メタノールなどの分子の吸着を電場印加下で行うことで、伝導度に電場のメモリー効果が現れることを期待している。この錯体は亜鉛イオン以外にもコバルト、ニッケル、マグネシウムを用いて合成できる上、ベンゾイミダゾールに種々の置換基を導入しても同型の構造が得られるため、金属イオンや置換基の効果を系統的に検討していくことで新たな現象を発見できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、ガス吸看に応答するイオン伝導体を開発できた上、多孔性錯体の相転移現象を見出したため。
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Strategy for Future Research Activity |
多孔性錯体によるイオン伝導を追求していく過程で見出された固液相転移現象は、今まで研究されてきた古典的な多孔性錯体には見られなかった画期的な新現象であり、プロセス性の向上など多くの利点が見込まれるため、今後一層注力して研究を進めていく。
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Research Products
(6 results)