2012 Fiscal Year Annual Research Report
安定な非局在型有機ラジカルを用いた多孔性ラジカル金属錯体の合成と電子機能物性開拓
Project/Area Number |
12J01154
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小出 太郎 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 非局在型中性有機ラジカル / トリオキソトリアンギュレン / 多孔性金属錯体 / 鈴木-宮浦カップリング / ピリミジル基 / 金属錯体 |
Research Abstract |
安定な非局在型中性有機ラジカルであるトリオキソトリアンギュレン(TOT)骨格を有する新規機能性分子の構築及びその物性評価とTOTと金属イオンから構成される多孔性ラジカル金属錯体の合成とバルク物性の解明を目的として研究を行った。臭素置換TOTのアニオン体を原料とし、鈴木-宮浦カップリング反応を用いて4-ピリジル基、3-ピリジル基、ピリミジル基を導入した誘導体(アニオン体)の合成に成功した。それぞれの化合物について、NMR、質量分析、電子スペクトル、X線結晶構造解析等を行い同定した。TOTは多段階レドックス能を持つ空気中でも安定な中性ラジカルであることが知られており、今回合成に成功した誘導体でも酸化還元により容易にラジカルを生じることを電気化学測定から明らかにし、実際に化学酸化することによってラジカルを得ることにも成功した。 得られたアニオン体を用いて種々の金属との金属錯化を行い、金属錯体の合成にも成功したが、いずれも非常に溶解性が悪く、溶液状態での物性測定は難しかった。固体物性測定に加え、アニオン体と金属塩の溶液の液一液拡散法による結晶化に成功し、単結晶X線構造解析から、金属錯体の構造を明らかにした。亜鉛イオンを介してTOTが二次元シート構造を形成しており、シート同士は少しずれてスタックした構造であった。TOTに囲まれた空孔が存在し、今後は更なる物性測定と酸化還元によるラジカルの生成と磁気物性測定、他の分子の導入や相互作用などについて検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿って研究を進行しており、カップリング反応を用いた誘導体合成、金属錯体合成に成功している。磁気物性測定に関しては酸化によるラジカルの生成を行い詳細に検討する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、TOTへの様々な置換基導入と金属錯体の合成について試し、構造と物性について明らかにする。金属錯体の溶解性が悪く溶液状態での物性測定が難しいが、固体電子スペクトル、X線構造解析等から構造と物性について調査する。酸化還元についても試し、ESR、SQUID等の磁気物性測定を行い開殻系分子であることの特徴を生かした新規機能性の発現を目指す。
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Research Products
(1 results)