2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01177
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 秀治 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 焦点のタイプ分け / 既知情報の計算 / 一般化量化子 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「生成方法の観点から、節内の焦点要素を決定するシステムを明示すること」である。これに基づき、平成25年度の研究実施計画は、「焦点は語用論的タイプと意味論的タイプに分けられる」という前年度の仮定(A)を前提にして、(i)各タイプの意味機能の公式化、(ii)語用論的焦点と文強勢の関わり方の明示化、(iii)意味論的焦点の提案に対する通言語的検証を行うことであった。これに対し、本年度の研究の成果は、①「仮定(A)の根拠を提出したこと」と②「(i)を概ね達成したこと」の二点である。成果①は、そもそも前年度の仮定(A)を確立するための必要最低限の研究基盤として評価されなくてはならない。その内容は、「音韻的主強勢によってマークされた焦点(音韻的焦点)と「だけ」などの焦点助詞によってマークされた焦点(統語形態的焦点)は意味機能的に同じか」という問いに答えるものである。具体的には、「音韻的焦点と統語形態的焦点は意味機能的に異なり、前者は仮定(A)でいう語用論的焦点に、後者は意味論的焦点に対応する」ことを主張し、その根拠として「コード化手段の多様性における違い」「真理条件的貢献における違い」「語用論的貢献における違い」を例示した。一方、成果②は、内容上「語用論的焦点と意味論的焦点の意味機能を先行研究の知見を取り入れながら公式化した」こととしてまとめられる。具体的には、「語用論的焦点は、それを含む発話文において変項を供給することで、その発話文が先行発話文から示唆されうる情報(既知情報)であるかを計算することに貢献するもの」として定義し、「意味論的焦点は、一般化量化子としての焦点助詞の第一項になるもの」として定義した。以上の成果は、焦点のタイプ分けの経験的根拠と理論的設定を提示するものであるため、タイプ分けを考慮しなかった先行研究に対する批判的再考につながる点で重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、「生成文法の観点から、節内の焦点要素を決定するシステムを明示すること」である。これに対し、本年度の研究の成果は、日本語のデータに基づいて「焦点のタイプ分けの確立」と「各タイプの意味機能の公式化」を達成したこととして見なせる。よって、現在までの達成度は、日本語の焦点システムの全貌を部分的に明らかにしているという点で低くはない。しかし、本年度に予定していた「音韻的焦点と音韻的強勢の関わり方の追究」と「意味論的焦点の提案に対する通言語的検証」が実施できなかったという点で、本研究は、当初の計画からやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究成果から浮上する課題は二つある。一つ目は「音韻的焦点と音韻的強勢の関わり方の追究」であり、二つ目は「提案全体に対する通言語的検証」である。これらの課題に対し、今後の研究の推進方策は、日本語のデータに基づいて焦点システムの全貌を明示し、その提案を少なくとも英語のデータに基づいて検証することである。具体的には、まず、一つ目の課題に取り組み、日本語を対象とする関連文献の調査を行うことで焦点と強勢の関わり方の知見をまとめ、独自の観点からその理論化を目指す。その後、二つ目の課題に取り組み、提案する焦点の全システムを主に英語のインフォーマント調査に基づいて検証し、修正・改善を加えることを目指す。
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Research Products
(3 results)