2013 Fiscal Year Annual Research Report
結晶融解模型の示唆する離散的時空構造からの非摂動的弦理論の研究
Project/Area Number |
12J01182
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡崎 匡志 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 非摂動的弦理論 / M理論 / M2ブレーン / トポロジカルtwisting / Riemann面 / コンパクト化 / 超共形不変性 / Chern-Simons-matter理論 |
Research Abstract |
本年度はCalifornia工科大学の大栗博司教授とともに「M2ブレーン理諭を記述する1次元量子力学」に関する研究に取り組んだ。この研究は研究課題の最終目標である「非摂動的弦理論の理解」を得る極めて有力なアプローチの1つである。 現在、非摂動的弦理論の定式化を担う有力な理諭として「M理論」が提唱されている。「M2ブレーン」はM理論に存在する空間的に2次元の拡がりを持った膜(membrane)であり、M理論における基本的な物体であると考えられている。最近になってM2ブレーンのが低エネルギーにおける力学的振舞いがBLG理論・ABJM理論と呼ばれる(1+2)次元の超共形不変性を持ったChern-Simons-matter理論によって記述されることが提唱されたが、現在までこれらの理論の適用範囲は極めて簡単な幾何の場合に限定されており、依然として多くの課題が存在する。 我々はより一般的な幾何として時間(1次元)とコンパクトRiemann面(2次元)の積の時空から構成されるM2ブレーンを研究した。このような状況のM2ブレーンはコンパクトRiemann面の幾何に依存して曲がった複雑な幾何となり得る顕著な例であり、その重要性が様々な背景で議論されているにもかかわらず低エネルギー有効理論を導出することに現在まで誰も成功していない。本年度の研究で我々が行った研究内容は次の通りである。 まずM2ブレーンを一般的な幾何の上に配置するとM2ブレーンの持つ超対称性は全て失われて安定なBPS状態にはならなくなるため、我々はM2ブレーンが超対称性を保持するようにRiemann面がCalabi-Yau多様体と呼ばれる空間の中に埋め込まれている状況を検証した。そしてそのような一般化された(曲がった)M2ブレーンの幾何の情報からトポロジカルtwistingと呼ばれる手法によってM2ブレーンの低エネルギー力学を記述する場の理論の場とLagrangianの導出を試みた。本年度の研究により, 幾何に依存して異なる場によって記述される複数の理論が得られるということが分かり、顕著な場合に有効理論を導出することに成功した。 次に得られた理論からM2ブレーン及びM理論の理解を得るために我々はRiema㎜面の大きさが理論のエネルギースケールよりも小さい極限を取ることによって(1+2)次元の理論をRiemann面上でコンパクト化(次元還元)し、1次元量子力学系を導出することを試みた。M理論においてBFSS行列模型と呼ばれる1次元量子力学が重要な役割を担うことが知られているが、BFSS行列模型は基本的自由度としてD0ブレーンを取り扱うためM2ブレーンの力学を記述することが困難である問題が指摘されている。対照的に我々の導出した1次元量子力学系はM2ブレーンの力学を直接的に記述する点でBFSS行列模型では扱えなかったM理論の情報を引き出せることが期待される。従って来年度は得られた理論の解析から実際にM2ブレーンの力学を理解する研究を計画している。 り、来年度は得られた理論の超共形不変性とその応用性の観点からも研究を実施するつもりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で得られた結果を2014年3月に日本物理学会で発表し、来年度は様々な大学で研究成果に関するセミナーをすることが決定している。来年度は得られた成果を論文にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で研究課題である「非摂動的弦理論の理解」に大きく役立つと期待される結果が得られたので、今後はその結果を論文にまとめることを予定している。2012年10月からCalifomia工科大学を拠点として大栗博司教授の下で委託生として研究しているが、2014年9月まで滞在して引き続き研究を行う予定である。研究会への参加や共同研究者との議論のため、多額の旅費が必要となることが見込まれる。従って科研費で補えない旅費は研究機関の補助等を利用することを計画している。
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Research Products
(4 results)