2013 Fiscal Year Annual Research Report
日本帝国崩壊後の樺太植民地社会の変容解体過程の研究
Project/Area Number |
12J01188
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
中山 大将 北海道大学, スラブ研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | サハリン / 樺太 / 引揚げ / 残留 / 帰国 / 移民 / 人口移動 / 植民地 |
Research Abstract |
〈研究目的〉 ・日本帝国が南樺太地域に形成した樺太植民地社会の、帝国崩壊後における変容解体過程を明らかにすること。 〈成果公表〉 ・本研究課題の前提となる植民地期の樺太社会に関する単著『亜寒帯植民地樺太の移民社会形成』(京都大学学術出版会、2014年)を刊行し、その中において近現代サハリン島を包括的に論じるための理論の構築を行った。 ・前年度、今年度と続け国内外の資料調査によりサハリン残留日本人の名簿の発見と分析が進みその実像(人数、姓名、残留理由、帰国時期、出生年など)だけでなく、インタビュー調査およびその他資料(主に外交史料館所蔵)をも加え、サハリン残留日本人の帰国事業の具体像(帰国背景、帰国時の状況、政府の対応)を明らかにし、「サハリン残留日本人―樺太・サハリンからみる東アジアの国民帝国と国民国家そして家族」(蘭信三編著『帝国以後の人の移動―ポストコロニアルとグローバリズムの交錯点』勉誠出版、2013年)、「サハリン残留日本人の冷戦期帰国―「再開樺太引揚げ」における帰国者と残留者」(『移民研究年報』第20号、2014年)の二つの論文に結実させた。 ・前者は、サハリン残留日本人の全体像を歴史資料とインタビュー調査から論じた世界初の論文であり、後者はそこでは頁数の関係で充分に論じきれなかった部分を補足するための論文である。これら2論文の刊行は、本年度研究計画における重点項目であり、その達成を実現するとともに、残留日本人の観点から樺太植民地社会の変容解体過程を示すことができたことは今年度の大きな成果であると言える。 〈資料調査〉 ・国内でサハリン韓人(朝鮮人)に関するまとまった資料群を発見したほか、台湾調査によってサハリン華僑に関する資料を発見した。これら資料を利用することで、今後さらに包括的に日本帝国崩壊後の樺太植民地社会の変容解体過程を論じることができると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
・予定通りに、サハリン残留日本人に関する基礎的論文2篇の刊行が実現した。 ・当初は予定しなかった単著が刊行され、樺太植民地史をサハリン島史の中に位置づける理論的作業が行えた。 ・当初よりも調査範囲を広げることで、サハリンの日本人だけでなく、韓人(朝鮮人)や華僑に関する重要資料が発見できた。
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Strategy for Future Research Activity |
・この2年間で収集した資料を整理し、目録を作成する。 ・この2年間は文字資料収集に若干偏重していた感があるので、今後はインタビュー調査なども積極的に行い、文字資料では補いえない部分を補完する。 ・また同様に「ソ連化過程」に偏重し、「内地化過程」に関する資料収集や分析を疎かにしていた面がある。この分野については、徐々に研究が蓄積されてきているので、それらを先行研究と位置付けながら、自身の研究を進める。
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Research Products
(13 results)