2012 Fiscal Year Annual Research Report
銀河団高温ガスの運動学とSXI搭載X線CCDの開発研究
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12J01190
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
上田 周太朗 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | X線天文学 / 銀河団の観測的研究 / 重元素分布の測定 / X線CCD / 軟X線応答の測定 |
Research Abstract |
本年度は、銀河団研究の対象としてペルセウス銀河団を選び、この銀河団の中心から周辺部までの重元素分布を測定した。今回は、酸素、ネオン、マグネシウム、シリコン、硫黄、鉄に着目した解析を行った。日本のX線天文衛星「すざく」搭載X線CCDカメラの観測データを用いて、中心から1.3Mpc(銀河団の半径の0.8倍に対応)までの領域の重元素分布を測定した。世界で初めて、酸素などの比較的軽い元素の組成比を銀河団周辺部まで測定したことになる。解析の結果、どの元素も周辺部では一定の重元素量で存在していることがわかった。さらに元素ごとの組成比は、重力崩壊型超新星爆発により生成されると期待される組成比とほぼ等しいことを明らかにした。酸素などは初期宇宙(赤方偏移が2~4)に大量に生成・拡散したと考えられており、この結果と合わせて考慮すると、この時代に鉄も大量に生成され、酸素などと共に銀河団の周辺部へ拡散していくという描像が考えられる。この描像は周辺部まで解析を行った本研究で本年度は、マグネシウムと鉄の関係を学術論文としてまとめた。また、次期X線天文衛星ASTRO-Hに搭載される新型X線CCDカメラであるSXI用のCCD素子の開発を行った。高エネルギー加速器研究機構のシンクロトロン放射光施設にて軟X線(0.1-2keV)をCCDに照射し、応答の測定を行ったデータを解析した。測定したCCDはSXI用のプロトモデル素子に当たり、SXIがどのような応答を示すかを知るために重要なCCDである。測定結果は現在運用中のX線天文衛星XMM-Newtonと同程度かより単色の応答であることがわかり、実用観測に耐えうる応答であることを証明した。この結果は学術論文としてまとめており、すでに論文誌NIMAから出版されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
銀河団周辺部の重元素分布の測定について、最も観測データ量の多いペルセウス銀河団についてはすでに一通りの解析を終えている。本研究の成果を国際的な銀河団研究会にて口頭発表を行った。測定した重元素分布のうち、鉄とマグネシウムの結果については短い論文にまとめて学術論文誌に投稿し、受理されており、現在出版中である。また、SXI搭載X線CCDの開発については、プロトモデルCCD素子のX線応答関数の測定結果を学術論文としてまとめた。学術論文誌NIMAに投稿し、受理され、すでに印刷されている。
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Strategy for Future Research Activity |
測定した重元素分布のうち、酸素とネオンの結果についてはまだ学術論文としてまとめていない。今後これらをまとめ、学術論文誌に投稿する。一方、銀河団中へ重元素が拡散していくメカニズムの解明も必要である。本研究で得られた重元素分布やその総質量をもとに、重元素生成の時期や輸送方法を研究する。銀河の中心に存在する超巨大ブラックホール(太陽の1億倍以上の質量)が輸送の一端を担っている可能性もあり、銀河団と合わせて解析を進める。。SXIの開発は、実際に宇宙に打ち上げる筐体・部品の製造・試験が始まるフェーズに移行しつつある。実際に打ち上げられるX線CCDの選定や性能評価を行う必要がある。プロトモデルCCD素子で実際に性能評価を行い、それを学術論文化した経験を生かし、これらの作業を進める。
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Research Products
(7 results)