2012 Fiscal Year Annual Research Report
ガスハイドレートにおける分子進化-反応場としてのクラスレート構造の役割と可能性-
Project/Area Number |
12J01209
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大島 基 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ガスハイドレート / 分子進化 / 放射線照射 / 紫外線照射 / 水素原子移動 / 電子スピン共鳴(ESR)法 / イオンクロマトグラフ / GC-MS |
Research Abstract |
CO2ハイドレート,CO2-CH4混合ガスハイドレートにおける放射線分解反応の調査を行い,誘起されるラジカル種の同定,及びその熱安定性の評価を行うことで,水分子(ホスト分子)で形成されたカゴを跨いで起こるゲスト分子(CO2,CH4)一ラジカル(HOCOラジカル,CH3ラジカルなど)間での反応について調査を行った. CO2ハイドレート内部のHOCOを電子スピン共鳴法により詳細な分析を行った結果,cis型,trans型と予想される2種類のHOCOが誘起されることがわかった.また,ホスト分子にD20を用いたCO2ハイドレートで実験を行った結果,DOCOが観測され,HOCOと同様にハイドレート内部で二次反応により減衰することがわかった.この結果はカゴを跨いでCO2-HOCO(or DOCO)間で水素原子が移動していることを示唆している.これらの結果は,放射線紫外線などにより天然のガスハイドレート結晶の表面のゲスト分子のみがラジカル化した場合においても,その内部までラジカルが拡散することを示唆している. CO2-CH4混合ガスハイドレートの調査により,照射試料内部にはHOCO,CH3ラジカルが誘起されることがわかった.単成分系と混合系のラジカルの生成量を比較した結果,混合系はより多くのラジカルが生成されることがわかった.混合系のラジカルの生成量の増加は,CO2とCH4が同じハイドレート中に存在することで,電子,プロトン,OHラジカルなどをより有効にゲスト分子由来のラジカル生成に取り込むことで起きていることが予想される.また,混合系のラジカル種は単成分系よりも熱的に安定化することがわかった.混合系のラジカル種の熱安定性は,異なるゲスト分子やラジカル種が結晶内部に混在する貯め,水素原子の移動(ラジカルの拡散)を阻害することで起こることが予想される.地球外に存在するガスハイドレートの多くはCH4,CO2,COなどの混合ガスハイドレートであることから,その内部に誘起されるラジカル量は単成分系の結果での予想よりも多いことが考えられる.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験,及び解析は当初の予定よりも進んでいるが,論文執筆は遅れている.当初の計画とは異なる実験(D2Oを用いた実験)なども行ったことで,宇宙地球化学だけでなく純粋な固体物性(固体内部での水素原子移動など)としてのガスハイドレートの新たな知見を得ることができている.
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで宇宙地球化学としての興味から研究を行ってきたが,今年度の結果により,固体内部での水素原子移動,ゲスト分子間での相互作用など新たな知見を得られた.今後は地球外でのガスハイドレートにおける分子進化の可能性を追求しつつ,ガスハイドレートの物理化学的な理解を深めるため,ガスハイドレート内部のラジカル種の挙動についてより実験を行って行く予定である. また,初年度では装置の納入のため遅れた紫外線照射実験も合わせて行う予定である.
|
Research Products
(6 results)