2012 Fiscal Year Annual Research Report
花器官の数と配置の決まり方:発生過程の数理モデルによる理解
Project/Area Number |
12J01243
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北沢 美帆 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 被子植物 / 形態形成 / 花器官 / 数理モデル |
Research Abstract |
萼片や花弁といった花器官の数は、被子植物門の大多数を占める真正双子葉植物では5個(五数性)であることが多い。四数性の花が次いで多く、六・七数性や、単子葉植物で多い三数性の花は真正双子葉植物では少ない。一方で、種によっては同一種・同一個体群でも花器官の数に大きなばらつきが見られる。大きさも形も違う多種多様な花で花器官数が同じであるのは、発生過程に特定の数になりやすい性質があるのではないだろうか。基本数は同じ五であるのに、ばらつきの大きさが異なるような状況は、どのような発生過程のパラメータが変化することで起こるのだろうか。 本研究は、数理モデルを用いた花器官の数が決定する条件の探索と、実地観察による花器官数のばらつきの調査の二つの項目からなる。数理モデルでは、花芽の発生過程を単純化して計算機上で再現し、花器官数がいくつになるかシミュレーションを行った。全モデルパラメータを植物の実態から外れない範囲で変化させてシミュレーションを行った。加えて解析的な計算(手計算)を行った結果、重要なパラメータを3個に集約できた。3個のパラメータとは、花芽分裂組織の大きさ、花器官原基が形成される時間および空間間隔に関するパラメータである。 並行して、花器官数にばらつきがみられるキンポウゲ科植物、特にセツブンソウについて花器官数の調査を行った。現在、開花時期や個体群ごとに、ばらつき方に違いはあるか、萼片・花弁・雌蘂の間でばらつき方に相関はあるか、と言った点について解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書では、研究の1年目である今年度にモデルパラメータの全探索と野外調査を行うとした。現状、花器官数に関わるモデルパラメータの全探索と整理に成功している。また、野外調査でもキンポウゲ科の複数の種についてデータを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画通り、数理モデルと野外調査の結果を結びつけることが次年度の目標である。まず、数理モデルの妥当性を検証するため、モデルパラメータを実測できる値に変換する。本研究で得られた3個のパラメータのうち、花芽分裂組織の大きさは実測できる。花器官原基が形成される時間および空間間隔については、オーキシンという低分子の輸送によるパタン形成と、細胞分裂の空間分布に変換できると考えている。前者については先行研究があるため(Jonsson et al., 2006)、後者について、細胞分裂の頻度・空間分布・細胞の機械的性質と、原基形成の間隔との関係を数理モデルから見積もる。並行して、確率性がある条件のもとで発生をシミュレートし、花器官数にどのようなばらつきが表れるか分布を計測する。
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Research Products
(2 results)