Research Abstract |
本年度の成果として,まず温度制御型高圧三軸試験装置を新たに製作し,それを用いてハイドレート生成分解実験を成功させたことが挙げられる.この実験には可燃性のメタンガスに比べて安全で取扱いが容易な二酸化炭素を用いた.具体的には,豊浦砂内に水が存在する状態で円柱形に成形し,それを三軸試験装置内に設置し,供試体の間隙内にCO2ガスを高圧で圧入する.その後,装置全体を冷却することで間隙内の水と二酸化炭素が反応し,ハイドレートが生成される.ハイドレート生成時には間隙圧力が一定となるようにピストンシリンダーを用いて制御していたが,温度圧力条件がハイドレート生成領域に入ったところで急激な圧力低下が確認された.またCO2ハイドレート生成後に排水径路を全て閉じ,気体及び水が排出されない条件で分解実験を行った.ハイドレートの分解には加熱法を用いた.これまでメタンハイドレートを胚胎している地盤の力学特性を知るための実験は数多くなされてきているが,本研究のように分解時あるいはハイドレート分解後の地盤の力学挙動を観察した成果は少ない.2013年3月には,渥美半島沖東部南海トラフにおいて世界初となる海洋上でのメタンハイドレートの産出に成功しており,分解中あるいは分解後の地盤の力学特性に関する研究は急務であるといえる.この分解実験の結果,加熱により供試体の温度が上昇し,ハイドレート分解領域に入ると,急激な圧力上昇が見られた.分解前の間隙圧力より最大で2.0MPa程度増加した.実際の海底地盤において,透気・透水性が極めて低い領域でメタンハイドレートが分解した場合,地盤内のガス圧が高まり,地盤の土粒子に働く骨格応力がゼロになり破壊に至る可能性があることが示唆される実験結果である. 本年度のもう一つの成果として,有限要素解析法により,海底地盤内でメタンハイドレートが分解した際の地盤変形予測シミュレーションを行った.この解析では,安全面に考慮しメタンガスの代わりに二酸化炭素を用いたのに対して,実際にメタンハイドレートの物性を導入しより実際に近い条件で変形挙動を見ることと,大規模なモデルを設定し海底地盤から産出した際の挙動を予測することが目的である.解析条件は海洋産出試験条件を模擬し,減圧法によりメタンハイドレートを分解させる.シミュレーション結果より,減圧により地盤内の水圧が消散し海底地盤沈下が発生した.この沈下は減圧による応力変化が支配的な要因であるが,メタンハイドレートの分解が始まった時点で,沈下の速度が急激に増加した。また減圧が終了して,圧力変化がほぼ収束した後も緩やかに沈下が継続しており,メタンハイドレート産出中だけでなく,産出後も地盤の変形に注意を払う必要があると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに温度制御型高圧三軸試験装置を開発し,ハイドレート模擬試料の生成及び分解実験を実施することに成功した.また新たに温度計測ユニットを設置し,ハイドレート生成中や分解中の供試体表面の温度計測も可能となっている. 解析では,実際の海洋産出試験条件でのシミュレーションを実施し,メタンハイドレートの分解と地盤変形の関係性を見ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
今後も実験と解析の両方面からメタンハイドレート含有地盤の化学一熱一力学挙動の解明にアプローチしていく.まず実験においては,ハイドレート分解中の体積ひずみや軸変位等の変形を計測する手法の確立が目標である.メタンハイドレートが分解すると,土粒子とハイドレート(固体)と水のみで構成されている地盤に気体の相ができる.この状態は不飽和土と言われ,その力学挙動は非常に複雑である.この不飽和状態での変形を計測することは,分解という化学変化と力学を関連付ける重要な研究であるといえる.解析では,海底地盤の物性値の精査を行う. 2012年度に海洋産出試験海域で事前のボーリング調査が実施され,採取されたコアに対して種々の力学試験がなされている.その結果,南海トラフ海域では深さ方向に異なった種類の地盤が分布しており,その力学特性も様々であることが分かった.これらのデータを用いて,海底地盤の地形を有限要素メッシュで再現し,傾斜地盤などでハイドレートを分解させた場合のシミュレーションを行う予定である.
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