2012 Fiscal Year Annual Research Report
ヘミセルロースの誘導体化と高分子量化による高強度・高機能性プラスチックの創製
Project/Area Number |
12J01289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ロジャース 有希子 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘミセルロース / キシラン / グルコマンナン / エステル / アセテート / フィルム / ナノファイバー / NMR |
Research Abstract |
本研究では、未利用であるヘミセルロース由来の高機能性プラスチック材料を創製することを目的とした。今年度は、キシラン、グルコマンナンなどの誘導体化とキャラクタリゼーション、さらにその成型加工と熱的機械的性質の測定を行った。 パルプから抽出したキシランを用い、カルボン酸/ジメチルアセトアミド/塩化リチウム系とカルボン酸/トリフルオロ酢酸系の2種類の反応系でエステル化を行い、炭素数2から16の種々のアシル基で置換されたキシランエステルを得た。化合物の分子量は、約4_7万であった。熱分析の結果、キシランエステルは融点を持たない非晶質の化合物であった。キシランエステルはキャストフィルムを形成し、電解紡糸法によりナノファイバーも作製できた。 また、コンニャクグルコマンナンを酢酸/トリフルオロ酢酸の混合溶液を用いてアセチル化し、置換度が1.3-3.0の種々のグルコマンナンアセテートを合成した。化合物のNMRスペクトルを詳細に解析しピークの帰属を行った。熱分析の結果、置換度が高いほど熱分解点は高く、ガラス転移点は低くなった。グルコマンナンアセテートのキャストフィルムでは、置換度が低い化合物の方が破壊強度や破壊伸びが高い傾向が見られた。さらに同様の方法で、炭素数2から12の種々のアシル基で置換されたグルコマンナンエステルを合成した。得られた誘導体の分子量は30-90万であった。グルコマンナンエステルは、全て非晶質であり、置換基の炭素数が小さいほど高いガラス転移点を有していた。グルコマンナンエステルのキャストフィルムでは、置換基の炭素数が少ないほど破壊強度が大きく、多いほど破壊伸びが大きくなった。 これらの結果から、キシランやグルコマンナンのエステル誘導体がプラスチック材料と成り得、置換度や置換基の構造でその熱的機械的性質を制御できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的はヘミセルロースのプラスチック材料化である。本年度はキシランとコンニャクグルコマンナンのエステル化を行いその詳細なキャラクタリゼーションを行った。ヘミセルロースのエステル誘導体の基本的合成法の確立とスペクトルデータの解析や熱的機械的性質などの、基礎的知見を得ることができた。さらに得られた誘導体のフィルムの作成やその基本的な熱的機械的物性の測定も行うことができ、ヘミセルロースがプラスチック材料に成り得ることが明らかとなってきた。他にもキシランとポリ乳酸のグラフト共重合体やブロック共重合体などの様々な誘導体化を行っており、今後さらなる発展の余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はキシランやグルコマンナンを用いて置換基の種類や置換度の異なる化合物を合成し、その物性に与える影響を調べる。エーテル化などの誘導体化も検討する。さらにキシランエステルのポリ乳酸やポリカプロラクトンなどの生分解性ポリエステルに対する添加効果の解析やブレンドの作成などを行う。キシランとポリ乳酸のグラフト共重合体やブロック共重合体についても合成や性質の解析を引き続き行う。その他の多糖類についてもエステル化やエーテル化などの誘導体化を試みる。
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Research Products
(13 results)