2013 Fiscal Year Annual Research Report
ヘミセルロースの誘導体化と高分子量化による高強度・高機能性プラスチックの創製
Project/Area Number |
12J01289
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ロジャース 有希子 東京大学, 大学院農学生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | ヘミセルロース / キシラン / グルコマンナン / プルラン / カードラン / エステル / コポリマー / ポリ乳酸 |
Research Abstract |
前年度は、広葉樹パルプ由来のキシランを中心にエステル誘導体を合成した。今年度は、これらのキシランエステル誘導体のポリ乳酸に対する添加効果を評価し、その結晶核剤効果を見出した。ポリ乳酸は、現在実用化に向けた研究が最も進んでいるバイオマス由来かつ生分解性を有する高分子である。種々のキシランエステルをポリ乳酸に添加して作製したブレンド体の結晶化挙動を詳細に解析したところ、ポリ乳酸の結晶化が促進されることがわかった。さらに、これらのブレンド体を溶融後、異なる温度で等温結晶化を行ったところ、キシランエステルを添加したときに、結晶化が50%完了した時間である半結晶化時間が大幅に短くなった。つまりキシランエステルが造核剤として機能していることが示された。 さらに、キシランとポリ乳酸からなるコポリマーの合成にも成功した。ブロックコポリマーはブレンドやグラフトコポリマーとは異なる特殊な結晶化挙動や相分離挙動を示すことが知られているが、多糖類を構成単位とする直鎖状のブロックコポリマーは、研究例がきわめて少なく、その性質も未解明の部分が多い。本研究では、キシランエステルとポリ乳酸からなるブロックコポリマーを合成し、その性質について評価した。DSC熱量測定の結果、コポリマーとポリ乳酸とのブレンド体では、90℃以下での等温結晶化過程において、ポリ乳酸単独のものよりも結晶化が促進された。また110℃での等温結晶化過程においては、コポリマーとポリ乳酸とのブレンド体では、ポリ乳酸単独では発現しない消光リング呼ばれる構造が観察され、特殊な結晶化挙動を示すことなどを見出した。今後、得られたコポリマーの成型加工や他のポリマーとのブレンド作製など、材料化へ向けた条件検討が必要である。また、こんにゃく芋由来のグルコマンナン、微生物産性のカードランやプルランなどの多糖を用いて、アルキルエステル誘導体の合成、その詳細なキャラクタリゼーション、熱的および機械的性質の評価等を行った。グルコマンナンエステルは、全て非晶質の化合物であり、高いガラス転移点を有する高熱安定性のポリマーであった。グルコマンナンエステルは全てキャストフィルムを形成し、置換基の炭素数が少ないほど破壊強度が大きく、炭素数が多いほど破壊伸び伸びが大きくなるなど、置換基の構造や置換度により物性が制御できることがわかった。グルコマンナンに加え、カードランやプルランについても、エステル基の構造や置換度によりその物性が制御できることを明らかにし、これらの多糖がプラスチックなどの材料として利用可能であることが明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はキシランエステル誘導体のポリ乳酸に対する添加効果の評価を行い、その結晶核剤効果を見出すことができた。また、キシランとポリ乳酸からなるブロックコポリマーの合成にも成功し, その結晶化挙動を詳細に解析できた。また、コンニャクグルコマンナンのエステル化を行いその詳細なキャラクタリゼーションも行った。これらのヘミセルロース誘導体の熱的力学的性質の評価やフィルムの作製を行い、これらの誘導体がプラスチック材料に成り得ることが明らかとなってきた。今後は誘導体の置換基の構造をさらに詳細に制御したり、対象の多糖を微生物産生の多糖類へ広げるなど、今後さらなる発展の余地がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はキシランやグルコマンナンを用いて置換基の種類や置換度の異なる化合物を合成し、その物性に与える影響を調べる。得られた知見をもとに、フィルムや繊維への成型加工を試みる。また、エーテル化などの誘導体化も検討する。プルランやカードランなど、様々な多糖の誘導体化を行い、その熱的機械的性質の解析とともに、材料化を試みる。
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Research Products
(18 results)
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[Presentation] Syntheses and Properties of Pullulan Esters2013
Author(s)
Norihiro IIO, Yukiko Enomoto-ROGERS, Hironori MARUBAYASHI, Taizo KABE, Akio TAKEMURA, and Tadahisa IWATA
Organizer
The 4th International Conference on Biobased Polyers (ICBP2013)
Place of Presentation
Hanyang University (Seoul, South Korea)
Year and Date
2013-09-26
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