2012 Fiscal Year Annual Research Report
ダイナミックな構造変化が駆動する鉄硫黄クラスター合成機構の全容解明
Project/Area Number |
12J01292
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
平林 佳 大阪大学, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 鉄硫黄クラスター / 鉄硫黄タンパク質 / X線結晶構造解析 / 構造変化 |
Research Abstract |
鉄硫黄(Fe-S)タンパク質は多様にしてかつ生物界に普遍的に分布しており、呼吸、光合成、アミノ酸やビタミン生合成、遺伝子制御に至るまで生命活動の根幹に関わる反応を担っている。それらの機能を支えるコファクターがFe-Sクラスターである。このFe-Sクラスターの生合成は、多成分タンパク質からなるマシナリーが担っていることが近年の遺伝学的研究から明らかにされた。SUFマシナリーはその代表であり、6種類のタンパク質(SufA、SufB、SufC、SufD、SufS、SufE)から構成されている。本研究では、マシナリーの"心臓部"といえるSufB-SufC-SufD複合体に焦点をあてた。この複合体は、SufCのATPase活性(ATP依存的なダイマー化)に共役してダイナミックな構造変化を起こし、これに伴って分子内部に完全に埋もれた必須残基が露出し、鉄と硫黄原子をFe-Sクラスターへ変換することが予想されている。本研究では、構造解析と機能解析の両面から、SufB-SufC-SufD複合体を中心とするFe-Sクラスター合成装置の作動メカニズムの全容解明を目的とした。将来的には本研究を基盤とした応用技術展開(創薬分野、特に微生物やマラリヤ原虫をターゲット)の可能性は計り知れない。 今年度は、SufB-SufC-SufD複合体のX線結晶構造解析に向けて、以下のような成果が得られた。1.ATP依存的なダイマー状態を固定するため、SufCに部位特異的変異を導入し、変異導入したSufCを含むSufB-SufC-SufD共発現系を構築することができた。2.変異導入SufB-SufC-SufDを大量発現させ、その複合体の単離精製系を確立することに成功した。3.ATPアナログやリン酸アナログを組み合わせることで、変異導入SufB-SufC-SufDの最適な結晶化条件のスクリーニングを行い、幾つかの候補を見出すことができた。 以上の成果は、本研究の目的達成に向けた一連の実験の中で、特にその礎ともいえるものであり、今後の実験計画を遂行するにあたり、非常に有意義な結果であるといえる。また今年度は、ここまでの結果をまとめ、国内外の学会で計9回の成果発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」の達成のため、本年度の研究実施計画に基づいて実験を遂行した結果、おおむね予定通りの成果が得られたため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は現在のところおおむね順調に進展しているため、今後の推進方策については、今年度の研究成果を踏まえ、次年度以降も、研究計画調書に記載した研究実施計画に沿って実施していく予定である。
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Research Products
(9 results)