2012 Fiscal Year Annual Research Report
シリコン結晶スピントロニクスのためのドーピング工学
Project/Area Number |
12J01355
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
村田 晃一 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シリコン / エピタキシャル成長 / ドーピング / X線吸収微細構造法 |
Research Abstract |
(1)表面ナノ構造を利用したMnドーピング法の確立 Si(001)表面上に形成するMn表面ナノ構造(Mn細線)を基に、分子線エピタキシー法によるMnδドーピング法の確立を試行した。作製した試料の電気特性を評価した結果、p型の電気伝導を示し、Mnがアクセプターとして機能していることが分かった。また、Mn原子を堆積する前にBi原子細線構造を形成することで、ホール濃度が上昇する結果が得られた。これらは、Mn堆積前の表面状態の制御がドーピング法確立へ有効であることを示している。 (2)埋め込みBi原子細線構造の局所構造解析 Si結晶中に埋め込まれたBi原子細線構造をドーパント源とし、高温アニールによりBiを活性化させるドーピング法を既に確立している。この過程におけるBi原子周辺の局所構造の変化を直接的に評価するために、X線吸収微細構造法を用いて評価を行った。評価対象は1/8MLと極希薄試料であるため、高輝度X線源が得られるSPring-8,BL37XUを利用した。その結果、埋め込みBi原子細線構造中のBiとSiの結合距離は2.6Aであり、アニールによりBi周辺のSiの配位数が減少することを明らかとした。 (3)微傾斜Si表面上へのBiドーピング法の確立と断面STM法による電子状態の評価 Si(211)基板上への、分子線エピタキシー法を用いたBiドーピング法を確立した。作製した試料の断面低温STM評価を、英国ロンドン大学にて遂行した。その結果、エピタキシャル成長層は原子スケールで平坦ではなく、プロセス条件の最適化が必要であることが分かった。また、エピタキシャル成長層の導電率は高く、2次元キャリア分布像を用いた評価が有効である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従い、Mnドーピング法、微傾斜Si表面へのBiドーピング法の確立を達成している。断面STM法による電子状態の評価結果は不十分であるが、試行実験として十分な知見が得られたと判断している。加えて、研究計画には記載していなかった研究も遂行した。x線吸収微細構造法を用いたSi結晶中のドーパント周辺の局所構造評価は他のドーパント周辺の局所構造評価にも応用可能であり、シリコン結晶へのドーピング法を理解する上で有効な研究である。以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
断面STM法による電子状態の評価に関して、試行研究にて得られた知見をもとに、成長温度を変数として、プロセスの最適化を行う予定である。また、Mnドーピング法に関しては、電気的特性のみならず磁気特性の評価を行う。Bi原子細線構造中のBi原子周辺の局所構造評価に利用したX線吸収微細構造法を、Mn細線構造にも適用し、Mn周辺の局所構造の同定を行う予定である。 加えて、Bi原子細線構造を利用したSi結晶スピントロニクスデバイスの機能実証と特性評価を、海外共同研究先(米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校)にて遂行する予定である。
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