2013 Fiscal Year Annual Research Report
オーストラリア家族と「いのち」の社会史--生殖技術と家族計画の視点から
Project/Area Number |
12J01368
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
藤田 智子 大阪大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | オーストラリア家族 / リプロダクション / 不妊治療 / 生殖補助医療 / 体外受精 / 法規制 |
Research Abstract |
今年度は、1. 昨年度の研究成果をもとにした研究発表、2.1970年代から1990年代前半における、体外受精を中心とした生殖補助医療の発展とその規制に関する現地調査、3. 各国の生殖補助医療への法規制の状況の概観、そして4. 特にイギリスにおける生殖補助医療の法制化と、オーストラリアのそれとの比較検討に取り組んだ。 具体的には、現地調査はヴィクトリア州メルボルンを中心に行い、政府文書や議会資料、新聞記事などの資料の収集と分析を行うと同時に、体外受精等をめぐる議論に関わった人物へのインタビュー調査も行った。さらに、サウス・オーストラリア州アデレードにも滞在し、フリンダース大学や州立図書館にて、サウス・オーストラリア州の法規制に関わる政府文書をはじめ、州議会の議事録や新聞記事、博士論文などの資料収集を行った。それにより、対象の期間中の生殖補助医療をめぐる議論を包括的に分析し、その議論の主要なアクターや主張を精査すると同時に、議論を通して再生産される家族規範について批判的に分析することができた。さらに、各国の生殖補助医療に対する法規制の状況、特にイギリスにおける生殖補助医療の規制に関する議論と法制化のプロセスを概観し、特にオーストラリア・ヴィクトリア州のそれとの比較検討を行い、そこから得られる日本への示唆についても検討した。 研究成果の発表については、日本社会学会およびThe Australian Sociological Association (TASA)にて、20世紀前半のオーストラリアにおける不妊治療クリニックの展開とその背景、「不妊」の医療化に関する研究発表を行った。TASAの報告では、特に「不妊」や「子どもがいないこと」の医療問題化と社会規範に注目して分析を行った。さらに、オーストラリア政府の家族研究所のセミナーにおいても、研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、基本的には当初の計画に沿って研究を進めたが、上述のように、オーストラリアにおける生殖補助医療に対する法規制のみならず、それと他国(特にイギリス)との比較分析を行い、日本への示唆についても検討した。研究発表も積極的に行い、日豪の社会学会、さらにはオーストラリア政府の家族研究所のセミナーでも研究発表を行った。これらの成果は、学会誌等への投稿準備中であり、本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、現地における資料調査と聞き取り調査およびそれらの分析を進め、積極的に成果報告を行っていく予定である。最終年度である平成26年度は、1980年代後半以降の代理懐胎をめぐる議論、さらには1990年代後半以降におこった家族と生殖のあり方の問い直し(レズビアン・カップルや独身女性による生殖補助技術へのアクセス権の問題や、ゲイ・カップルによる代理懐胎等の生殖技術をめぐる新たな動きなど)をめぐる議論の分析を進める予定である。そして、それまでの議論を総合し、家族と生殖の歴史としてまとめる予定である。また、今年度学会で報告した論文を学会誌等に発表するとともに、今年度の成果をもとに学会報告も行う予定である。
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Research Products
(4 results)