2012 Fiscal Year Annual Research Report
量子展開環の組合せ論的表現論とDirichlet級数の研究
Project/Area Number |
12J01376
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
石井 基裕 筑波大学, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 一般Kac-Moody Lie環 / 量子展開環 / 結晶基底 / 大域結晶基底 / Demazure加群 / Demazure指標公式 / パス模型 |
Research Abstract |
一般Kac二Moody Lie環て以下,GKM Lie環)の表現の結晶基底の構造の解明,及びGKM Lie環よりも比較的構造が簡明なKac-Moody Lie環(以下,KM Lie環)の場合の理論との関係を与えること(GKM Lie環に関する問題を通常のKM Lie環の議論に帰着させること)を一つの目的として,これまでの研究で私はGKM Lie環の可積分表現(Jeong-Kang-Kashiwaraにより導入された加群圏の対象)の結晶基底を,ある標準的な方法で付随している通常のKM Lie環の可積分表現の結晶基底の中に埋め込むことができること,そしてこの埋め込みがある意味で結晶構造を保存するようなものであるという結果を得ていた. ところが,この結晶基底の埋め込みに対応するような表現の埋め込みの存在については,一般には不明であった.このことについて,ある条件の下では,表現の間の対応が得られることを示し,更にそれらのGKM Lie環の表現論への応用を与えた. 具体的には,通常のKM Lie環の表現論で知られているDemazure加群の一般化と見なすことができるGKM Lie環(のBorel部分環〉上の表現に対して,付随するKM Lie環(のBorel部分環)上のあるDemazure加群の中への埋め込みが存在することを示した.更にこの埋め込みは大域結晶基底の間の対応を誘導すること,そして結晶極限(q=0)においては上述の結晶基底の埋め込みを復元することを示した.これらの応用として,KM Lie環の表現論で知られているDemazure指標公式の一般化と見なすことができる指標公式を上述のDemazure加群の一般化と見なすことができるGKM Lie環(のBorel部分環)の表現に対して与えた. 以上の結果は,GKM Lie環の表現論をKM Lie環の表現論に関連づけるものであり,応用上重要な結果であると考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
量子展開環の表現論・組合せ論の一般論についての研究は,これまでの研究結果の更なる精密化,及び一般Kac-MoodyLie環の表現論への応用が得られるなどの進展があった.一方,量子展開環の表現論のWeyl groupmultiple Dirichlet級数への応用については,当初の計画よりもやや遅れている.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,有限ルート系の場合のWeyl group multiple Dirichlet級数に対して,量子展開環の組合せ論的表現論(結晶基底のパス模型・Mirkovic-Vilonen多面体による実現)を利用した統一的な記述を与えることを目指す.また,Lee-Zhangによる最近の結果により,(対称化可能な)無限ルート系に対するWeyl group multiple Dirichlet級数の構成が与えられたが,いくつかの有限ルート系の場合に知られているような組合せ論的な記述は与えられていないので,最終的にはこれらの場合も含めた形で統一的な記述を与えることを目指す. 一方,本年度の研究成果により量子展開環の表現論の一般論的な側面に対しての新たな応用の可能性も広がったので,Weyl group multiple Dirichlet級数に限らず,純粋に表現論的な応用や本年度の研究成果の更なる精密化に関する研究も重要な課題であると考えている.
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Research Products
(2 results)