2013 Fiscal Year Annual Research Report
サブTHz超音波を用いた物質の弾性と機能との強相関の究明
Project/Area Number |
12J01382
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長久保 白 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 音速計測 / 圧電体 / ピコ秒超音波 |
Research Abstract |
無線通信技術は携帯電話やPCなど、我々の生活に深く根ざす必要不可欠な技術の一つである。無線通信は様々な用途に使用されており、それらで使用する電波の周波数は総務省の管轄によって厳密に規定されている。そのため無線通信を行うためには様々な周波数の電波が飛び交う中から所定の周波数の信号のみを取り出さなくてはならない。そこで必要とされるのが特定の周波数成分の信号のみを取り出すことのできるバントパスフィルタである。現在の携帯電話などのデバイスには表面弾性波フィルタというものが使用されている。これは受信信号に応じて材料が変形する圧電体という材料を基板上に数μm成膜し、その上にくし型の電極を数十nm程度作製したものである。こうすることで圧電体の音速と電極の櫛と櫛の間隔によって決まる周波数の信号のみを取り出すこができる。表面弾性波フィルタは電極の間隔や個数を変えることで透過周波数及びその帯城を調整することができ、小型化も可能な優れたフィルタであるが、最も肝心なパラメータである数・mの薄膜の音速は計測するすべがなく未知であった。バルク材では計測されている例もあるが、薄膜とバルクでは特性が大きく異なるため薄膜に対する音速の直接計測は需要が高い。 そこで本研究では極短パルスレーザーを用いたピコ秒超音波法という方法で薄膜の音速及びその温度依存性を計測する手法を確立し、圧電体であるAIN薄膜(膜厚約1μm)と、音響弾性波フィルタの音速が温度によって変化しないようにする目的で使用される石英ガラス薄膜(膜厚2~4μm)の計測を行った。計測の結果、今回作成した薄膜の室温での音速はバルク材料と同じであるが、温度依存性は過去の報告値とも大きく異なるという事を解明した。これはデバイスの開発上重要な成果であり、この手法が今後のデバイス開発に大きく貢献できるという事も立証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では高精度で計測可能な光学系の構築に成功し、更に従来ではできなかった音速と屈折率の同時計測も達成した。その結果、当初の計画以上に重要・精確な結果を得ることができ、また計測を順調に進めることが出来たため予定以上の材料に対する計測を行うことが出来た。また「9. 研究実績の概要」に記したのは本研究で取り扱った実験の一部に過ぎず、総じて当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは現在得られた成果をよりレベル高いジャーナルに投稿できるようにさらに実験の工夫・解析を進める。具体的には屈折率の温度依存性計測や現在観測している周波数とは異なる周波数の超音波を観測するなどをして未解明の物性・物理を明らかにしたい。特に今年度取り組みたいのは横波の励起検出である。現在観測しているのはいわゆる粗密波という縦波だけであるが、物性としては横波及び横波弾性率というもの方が波形・変形などという他の機械的性質にも関連している重要な物理量である。MHz帯ではローレンツ力を用いた方法で励起されているため、このピコ秒超音波法でもそれを応用した手法で励起・検出を行いたい。
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Research Products
(5 results)