2012 Fiscal Year Annual Research Report
明清交替期における朝鮮王朝の外交政策-特に対後金外交を中心に
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12J01398
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 開 東京大学, 人文社会系研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 朝鮮王朝 / 後金 / 明清交替 / 外交 |
Research Abstract |
清朝の前身である後金国と朝鮮王朝の外交交渉過程を、後金国成立(1616)の前後から検討する作業に着手した。朝鮮側の漢文史料と後金側の満文史料という異なる言語で記された史料を対照し、多くの史実の確定に努めるとともに、両国認識の差異についても検討を行った。まず、朝鮮側に詳細な記録がありながら、従来の研究では等閑に付されてきた1621年の朝鮮使節鄭忠信の活動を検討することで、当時の両国関係を交渉の局面に即して具体的に明らかにした。当時の両国関係は稲葉岩吉『光海君時代の満鮮関係』(大阪屋号書店、1933年)が示した、非常に友好的な関係であったとする見解が定説であったが、本研究により、当時の両国の間に国交は結ばれておらず、鄭忠信派遣以降も明朝の地方勢力の台頭により、両国の交渉も満足に行われていなかった実態が明らかになった。また、それ以後の両国関係の展開として、1627年の後金による朝鮮侵略である丁卯胡乱時の外交交渉過程を、侵略に至るまでの経緯も含めて考察し、この戦乱が両国関係構築の起点となったことを指摘した。この戦乱以降、1636年に清朝が朝鮮を侵略するまでの期間は研究史上の空白期間であるが、朝鮮と後金の間に密接な交渉があったと考えられることもあわせて指摘した。そして、その実態の一端として、1628年の朝鮮使節鄭文翼が記した報告書を分析し、朝鮮人捕虜の買い戻しや開市の延期に関する活発な交渉活動の存在を明らかにした。以上の研究により、明清交替という国際変動に対する朝鮮王朝の具体的な対応と、その成果の一端が明らかとなり、その後の朝鮮・後金関係、朝清関係全体を再考する必要性が指摘された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
朝鮮から後金へ派遣された外交使節の活動に対する事例研究を行いつつ、両国関係の推移をも同時に明らかにするという研究目的と方法を実践することができた。時期的にも、誤解の多い後金国成立前後の朝鮮・後金関係について新知見を打ち出すことができたことに加えて、1627年の丁卯胡乱時の交渉過程を明らかにすることで、朝鮮・後金関係の基本的性格についてもある程度の輪郭を示すことができた。さらに、1628年という非常に早い時期における両国交渉の具体像を伝える史料を発見し、学界に紹介することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
後金に派遣された朝鮮使節による報告書はあと二件伝存するので、これらの分析を中心として、朝鮮・後金関係の実態を時期的変遷を考慮しつつ明らかにしていく。後金側の満文史料も、新たな史料の訳注と公開が進められており、これらと朝鮮史料を対照していくことで、明清交替における国際関係の変動の新たな局面をさらに精緻に明らかにしていくことができる。
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Research Products
(4 results)