2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01410
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 真己 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | スピントロニクス |
Research Abstract |
本研究の目的は、局在スピンと伝導電子の相互作用について、物性物理の観点から明らかにするとともに、その互作用を起源とする現象を工学的なデバイスへと応用していくことである。この目的に従い、昨年時より、フェリ磁性体におけるスピン起電力について研究を行ってきた。スピン起亀力は、スピントロニクス分野において2007年に提唱された新規な起竜力であり、局在スピンと伝導電子の相互作用により発生するという特徴を持ち、設定している目的にさらに迫っていくことができる。さらにスピントロニクス分野においては、フェリ磁性体などの物質を研究の対象とした報告は限られているために、本研究によりフェリ磁性体を用いた新たなスピントロニクスデバイス実現の可能性を示し、スピントロニクス分野における研究対象を押し広げることができる。研究代表者は、容易な加工性とフェリ磁性的な性質をもつマグネタイトを選択し、フェリ磁性的な特徴によって発生する巨大なスピン起電力を観測することと、未だ十分に明らかでないフェリ磁性体における伝導電子輸送にっいて知見を得ることを目的として研究を行ってきた。 今年度は、マグネタイトの磁気共鳴時に発生する直流電圧の外部磁場印加角度依存性を明らかにし、観測された直流電圧信号の一部がスピン起電力よりなるということを明らかにした。これは、フェリ磁性体において初めて観測されたスピン起電力であり、フェリ磁性体の局在スピンの影響下で伝導電子がどのように輸送されるのかという問題について新たな知見を与えうるとともに、将来のスピントロニクス分野における研究対象の拡大に貢献する結果である。研究代表者は、得られた実験結果を国内外の学会において発表を行い、磁性体に関する学会誌に論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の主たる目的は、局在スピンと伝導電子の相互作用について、基礎物理の観点から明らかにし、その知見を工学的なデバイス応用へとつなげていくことである。研究代表者は、フェリ磁性体の磁気共鳴時に発生する直流電圧の外部磁場方向依存性を明らかにすることにより、スピン起電力の明確な寄与の存在を明らかにした。この実験結果は、フェリ磁性体を用いてスピン起電力が発生するという新たな知見をスピントロニクス分野に与え、今後のスピントロニクス分野における研究対象を押し広げる可能性を持つ。従って、本年度の研究目的を当初の計画以上に進展させることができたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度の方針は以下である。今年度観測されたマグネダイトにおけるスピン起電力は計画当初予想していたよりも小さく、過去に強磁性体において報告された値と同程度であった。来年度は、この原因を明らかにするとともに、マグネタイトとは異なるフェリ磁性体を用いることによって, 巨大なスピン起電力の観測を目指す。さらに、観測の対象をスピン起電力に限ることなく、フェリ磁性体におけるスピントルク輸送現象やスピンポンピング現象など、より多彩な現象に目を向けることによって、フェリ磁性材料において局在スピンが伝導電子の輸送に与える影響を明らかにしていくことを計画している。
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Research Products
(5 results)