2012 Fiscal Year Annual Research Report
多能性の基本的原理に迫る -鳥類、爬虫類を通して見る多能性の分子機構-
Project/Area Number |
12J01443
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中能 祥太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 多能性 / 進化 / 鳥類 / 爬虫類 |
Research Abstract |
鳥類・爬虫類初期胚において多能性を与える分子メカニズムを明らかにすることが本研究の最終目標であるが、1年度目の平成24年度は、種を越えて保存されている可能性が高いFGF/ERKとGSK3シグナルによる多能性の負の制御に主眼をおいて研究を実施してきた。その結果、FGF/ERKシグナルおよびGSK3シグナルによる多能性の負の制御は、哺乳類・鳥類・爬虫類に共通している可能性が示唆された。加えて、胚が発生するにつれ、マウスES細胞のコロニー様のコロニー形成能が失われることから、培養下の多能性幹細胞と、失われた部分を再生する胚の調節能、および発生における予定運命の決定が深く関連しているのではないかという、これまで議論されてこなかった新しい見解を提示するにいたった。 一方で、多能性の正の制御機構は、哺乳類・鳥類・爬虫類の中で多様化していることが予想されているため、上のような哺乳類のシステムで働いている遺伝子のホモログを検証するという方法が使えない。そこで来年度への布石として、遺伝子の発現量が初期胚に特異的に高いものを、公共のデータベースからランキングした。その際、上記の予定運命の決定と多能性の関連という観点から、比較群を設定し、ニワトリの多能性の正の制御に関与する遺伝子の候補をリストアップすることができた。その中に、他の知見からも、多能性に関与することが示唆される遺伝子が見つかり、今後これらの因子を軸に、ニワトリ胚の多能性の正の制御機構を詳細に検証していく目処が立った。 山中伸弥教授のノーベル賞受賞に伴い、人工多能性幹細胞(iPS細胞)に関連した研究が注目を集める中で、以上の研究成果は、多能性の進化的背景を明らかにし、より深い理解にいたるための、小さいながらも重要な進歩である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
FGF/ERK、GSKシグナルによる多能性の負の制御が羊膜類において保存されている可能性を示す論文を、自身が筆頭著者として執筆し、査読の後、2013/02/22にZoological Scienceよりアクセプトを受けた(タイトル:Inhibition of MEK and GSK3 supports ES cell-like domed colony formation from avian and reptile embryos)。多能性の負の制御機構に関する論文を発表できるのは2年度目以降、と考えていた当初の研究計画よりも早く順調な進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
公共のデータベースのランキングから得られた、ニワトリの多能性の正の制御に関与する遺伝子の候補の中で、マウス初期胚においても重要な役割を果たしていると考えられるが、詳細が理解されていない遺伝子に注目し、そのニワトリ初期胚中、およびニワトリ胚培養細胞における役割を詳細に調べる。
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Research Products
(3 results)