2012 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエの概日リズム制御におけるステロイドホルモンの機能の解明
Project/Area Number |
12J01444
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
塩谷 天 筑波大学, 大学院・生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 昆虫 / 概日リズム / ステロイドホルモン |
Research Abstract |
昆虫の脱皮・変態を司るステロイドホルモンであるエクジソンが、成虫の概日リズムを制御する可能性についてキイロショウジョウバエ成虫を用いて検討した。まず初めに、ショウジョウバエ成虫の脳内で概日リズムを制御する神経(ペースメーカーニューロン)においてエクジソン生合成酵素遺伝子が発現しているかについて、蛍光抗体染色法によってタンパク質の局在を調べた。その結果、Shroudに関してはペースメーカーニューロンでの発現が認められたが、Phantom, Disembodied, Shadow, Shadeについてはペースメーカーニューロンでの発現が認められなかった。さらにこれらの酵素遺伝子の脳内での発現はおのおのでまったく異なるパターンを示した。また、Neverland, Noppera-boについては成虫脳内でのシグナルが検出できなかった。さらに定量PCR法にて、成虫頭部でのエクジソン生合成酵素遺伝子のmRNA量が日周変動するかについて検討した。その結果、neverland, shroud, phantom, noppera-boに関して発現は認められたものの、既知の日周変動することが知られているperiodなどのような発現変動は示さないことが明らかとなった。 幼虫期においては、すべてのエクジソン生合成酵素は前胸腺とよばれる内分泌器官の細胞で発現していることが示されている。しかし今回の成虫脳内における発現解析の結果から、単一の細胞においてエクジソン生合成酵素が発現しているわけではないことが明らかとなった。このことはショウジョウバエ成虫脳内におけるエクジソン生合成は単一の細胞内で行われるのではなく、エクジソン生合成の中間産物が脳内の細胞間を移動して、最終的にエクジソンへと変換される可能性を示唆している。 現在までにエクジソンがショウジョウバエ成虫において存在することは示されていたが、明確な生合成器官は卵巣以外では明らかにされていなかった。今回の研究は、ショウジョウバエ成虫脳内においてエクジソン生合成が行われている可能性を示唆する初めての成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の期待では、エクジソン生合成酵素遺伝子のすべてが単一の細胞内で発現していると予想したが、そうならなかった。すべての遺伝子がペースメーカーニューロンで発現していれば、トランスジェニックRNAi法により個別の遺伝子の機能を阻害する予定であった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は生合成酵素遺伝子の発現が時計遺伝子の制御を受ける可能性について、時計遺伝子の変異体を用いて発現解析をおこなう。また成虫頭部においてエクジソンが生合成されているかについて、エクジソン定量キットを用いてその量を定量する。shroudに関しては、ペースメーカーニュロンでRNAi法により機能を抑制した際の行動変化を解析する予定である。その他の酵素遺伝子については、発現細胞のみで機能抑制をおこなうことが出来ないが、神経全体で機能抑制を起すことは可能なので、その方法で行動実験を行う予定である。
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Research Products
(3 results)