2012 Fiscal Year Annual Research Report
可視光偏光観測による活動銀河核ジェットの加速・収束機構の解明
Project/Area Number |
12J01447
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
笹田 真人 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | 偏光 / 変動タイムスケール |
Research Abstract |
私が研究しているブレーザーは活動銀河核(AGN)の一種である。AGNの中にはジェットと呼ばれる相対論的なプラズマを噴出する天体もおり、このジェットを真正面に受けて観測している天体をブレーザーと呼ぶ。ブレーザーはジェットの相対論的効果によってジェットからの放射が卓越する。私はブレーザーを可視光で観測することで ジェット内の構造、放射メカニズムを調べている。ジェットからのシンクロトロン放射は原理的に磁場に対して垂直な方向に偏光することが知られており、偏光を検出することで磁場の情報を直接得ることができる。ブレーザーの大きな特徴に光度、偏光の変動が挙げられ、この変動はジェット内での放射領域の状態を表しており、光度と偏光の変動からジェット構造を調べる。研究に使用したかなた望遠鏡は、観測の柔軟性からモニター観測に有利であり、さらに偏光観測装置を搭載した望遠鏡であるため、ブレーザーのモニター観測に適した望遠鏡である。私はブレーザー45天体の多色偏光モニター観測を実施し、ブレーザーの光度、偏光の挙動をモニターした。モニター観測によって得られたブレーザーの光度と偏光の変動を周期解析することで、変動タイムスケールを見積もることができる。変動タイムスケールはその天体固有の特徴であり、タイムスケールから天体のサイズ等の物理状態を求めることができるため重要なパラメータとなる。モニター観測から見積もられた光度と偏光の変動タイムスケールは同じ天体でも両者で異なり、光度のタイムスケールの方が偏光のタイムスケールより長いか、少なくとも同じという結果となった。偏光の変動タイムスケールは放射領域のサイズを表しており、ジェットの物理を調べる上で偏光のタイムスケールが重要となることがわかった。また、ブレーザーの変動は様々な放射領域からの放射が足し合わさって観測されていることを表しており、ブレーザーは多成分的な放射をしていることを明らかにした。これらの結果は2013年3月に行われた日本天文学会春季年会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジェットの放射メカニズムを研究するために、これまでジェット内の構造を可視光偏光モニター観測から探ってきた。偏光は磁場の情報を直接得ることができるため、ジェット内の磁場構造についての直接的な情報を得ることができる。それにより変動の起源や放射領域での物理現象について理解を得ることが出来た。また、モニター結果から偏光と光度の共通点と相違点も分かってきた。これにより放射領域がどのような物理状態であるかを知ることが出来てきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ジェット内の磁場構造や放射領域の物理状況について分かってきた。そこで次はジェットが生成されるメカニズムを調べることを目標とする。そのためにジェットと中心ブラックホールの周りの降着円盤の関係性についての研究を進めていく。そのために、今年度はすばる望遠鏡などの大望遠鏡にブレーザーの偏光分光観測提案を提出し、ジェット放射と降着円盤放射の関係性を調べることを目指す。さらに違う視点として、ブレーザーの光度変動を体系的に研究することを目指す。ジェットの活動性は各々個性があり、それらの光度変動の共通性を調べることにより、ジェットの活動性の共通性を調査する。
|
Research Products
(3 results)