2012 Fiscal Year Annual Research Report
格子量子色力学によるクォーク・グルーオン自由度からの非摂動論的現象の研究
Project/Area Number |
12J01458
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
權業 慎也 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | QCD / 閉じ込め / 非摂動論的現象 / カイラル対称性 |
Research Abstract |
強い相互作用を記述する量子色力学(QCD)では、低エネルギー領域においては、様々な非摂動的な現象が多数現れている。とりわけ重要な非摂動論的現象として"カラーの閉じ込め"と"カイラル対称性の自発的破れ"が知られており、両者はクォーク・グルーオンの自由度からハドロンを理解するうえで重要な役割を果たしていると考えられている。そこで我々はQCDから第一原理的に取り組む唯一の方法である"格子QCDによる大規模数値計算"を用いて、クォーク・グルーオンの自由度から非摂動的な現象を多角的に解析した。具体的には、特に次の2項目に取り組んだ。 まず"カラーの閉じ込め"と"カイラル対称性の自発的破れ"の相関に関する研究で、ディラック固有値、つまりγμDμ=γμ(∂μ+igAμ)の固有値を用いてゲージ不変に両者の関係を調べる枠組みを構築し、"SU(3)格子QCDの大規模数値計算"を用いて解析を行った。その結果、ディラック固有値を通して"カラーの閉じ込め"と"カイラル対称性の自発的破れ"が直接は関係づけられないことを明らかにし、閉じ込めは起こるが、カイラル対称性が回復した状態がおこりうることを世界で初めてQCDから示唆した。 2つ目はクォークの"カラーの閉じ込め"を説明する候補の一つである双対超伝導描像に関する研究を行った。具体的には、SU(3)格子QCDを用いて、最大可換ゲージにおける対角・非対角成分のグルーオンの伝播関数を座標空間・運動量空間で研究した。その結果、対角グルーオンは0.3GeV程度の有効質量を有するのに対し、非対角グルーオンは1GeV程度を有することを明らかにした。これは、閉じ込めを含めた低エネルギーの様々な現象において、対角成分のグルーオンの自由度のみが寄与することを意味しており、QCDにおける双対超伝導描像の強い証左をあたえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究がすすんだため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後さらに本研究を発展させ、量子色力学における非摂動論的現象の解明を進める。具体的には最大可換ゲージにおけるグルーオンの伝播関数の研究を発展させ、有限温度ではどういう振る舞いをするかを調べる等をする予定である。また、それだけではなく、最大センターゲージにおける研究も進める予定である。
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Research Products
(11 results)