2013 Fiscal Year Annual Research Report
オオバギ属植物(トウダイグサ科)と花序で繁殖するアザミウマの送粉共生とその進化
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12J01464
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山﨑 絵理 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 送粉 / 被食防衛共生 / アリ植物 / 植物-動物相互作用 / アザミウマ / オオバギ属 / トウダイグサ科 / 忌避物質 |
Research Abstract |
被子植物は植食者に対して、多様な防衛形質を進化させてきた。その防衛形質は、植食者との関係ばかりでなく、他の生物との関係にも影響を与えることがある。また逆に、別の植物-動物相互作用に関わる形質が、植物と植食者の関係に影響することがある。本研究では、トウダイグサ科オオバギ属植物で送粉とアリ防衛の進化的関係を調べた。オオバギ属植物のほとんどの種は、葉の花外蜜腺に誘引されて訪れる不特定のアリに防衛されるが、一部は幹内に特定の種のアリを住まわせ極めて強くアリに防衛される「アリ植物」である。オオバギ属で送粉様式が分かっている種は少ないが、アリ植物を中心とした一部の種で、花を覆う小苞葉の内側で採餌・繁殖を行うアザミウマやカメムシによる送粉が知られている。特に平成25年度は、以下の点を明らかにした。 ・アリ植物Macaranga winkleriにおける送粉者アザミウマによる肛門分泌物を用いた防衛アリの忌避 防衛アリは植食者だけでなく送粉者も追い払い、送粉を妨害することがある。本研究では、アザミウマによって送粉されるオオバギ属の1種において、送粉者と防衛アリの関係を調べた。まず、昆虫に対する防衛アリの行動を調べたところ、アリは送粉者以外の昆虫には攻撃行動をとることが多かったが、送粉者アザミウマに遭遇した時、特にアザミウマが肛門から液滴を分泌した時には、逃避行動をとることが多かった。さらに、アザミウマの肛門分泌物や、その主成分であるデカン酸を付着させたテフロン片に対する反応を観察したところ、対照区と比べ逃避行動が多く見られた。以上から、送粉者アザミウマは忌避効果のある液滴を肛門から分泌することで、アリからの攻撃を避けていることが示唆された。オオバギ属では、アリに妨害されにくい送粉者の獲得が、アリ植物の進化に寄与したと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目標としていた実験(生物検定)や化学分析が計画通り進行した。また、計画していた学会での成果発表や、国際誌への投稿も達成された。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、オオバギ属植物において、防衛アリに花粉の媒介を邪魔されない仕組みを持つことが、より強いアリ防衛の獲得に重要であることが示された。極めて強いアリ防衛強度をもつアリ植物は、オオバギ属以外にもアカシア属(マメ科)、セクロピア属(セクロピア科)、バルテリア属(トケイソウ科)など様々な植物のグループに存在するが、これらのグループでのアリ植物の進化にも、アリに送粉を邪魔されない仕組みの獲得が重要であったか確かめることが今後の課題である。
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Research Products
(4 results)