2013 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光法を用いた雌霊長類の新規発情モニタリング
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12J01484
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木下 こづえ 京都大学, 野生動物研究センター, 特別研究員(PD)
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Keywords | オランウータン / 内分泌 / 近赤外線 / 回帰分析 / 繁殖 / 野生動物 / 動物園 / 希少種 |
Research Abstract |
近赤外領域における数種の吸收バンド用いた、尿の近赤外スペクトル測による雌霊長類の新規発情モニタリング法の開発を目的として、本年度は主に、野生下でも尿の保存に利用しやすいフィルターペーパー(ガラス繊維ろ紙)上で乾燥させた尿サンプルから、拡散反射法により近赤外スペクトルを得て、発情ホルモン濃度定量のためのモデル解析を行った。 1. 昨年度の実験から、農薬などの微量成分の定量分析で応用されているフィルターペーパーを使用することで、雌オランウータンの尿中ホルモン濃度を近赤外分光法で定量できる可能性が見出された。本年度では、粒子保持率、通気度、厚さおよび秤量の異なる複数種のフィルターペーパーを使用し、それぞれの尿近赤外スペクトル測定によるホルモン濃度の定量について精度を比較した。その結果、エストロングルクロニド(EIG)およびクレアチニンにおいて、通気度が高く、粒子保持能が比較的低いフィルターペーパーを用いた場合に良好な結果が得られることが判明した。 2.3頭のオランウータンの雌を供試し、妊娠中の尿中EIG、エストリオール(E3)、プレグナンジオールグルクロニド(PdG)および胎盤性ロイシンアミノペプチダーゼ(P-LAP)濃度を酵素免疫測定法により測定し、正常出産および死産時の濃度動態を比較した。その結果、これらのホルモンおよびプロテアーゼ濃度を測定することにより、本種の死産時における胎児・胎盤間の機能不全を診断できる可能性が示唆された。今後、これらの検査項目についても近赤外分光法で迅速に定量できれば、本種の繁殖効率の向上に貢献できることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度、飼育下および野生下でも使用および保存が容易なフィルターペーパーに尿を染み込ませ、乾燥させたサンプルを用いて尿近赤外スベクトルを測定することを考案した。本年度では、さらに様々なフィルターペーパーを使用し、発情ホルモンおよびクレアチニンにおいてより精度の高い回帰モデルの構築に成功した。この方法を用いれば、これまで困難であった野生下での採尿が容易となり、尿近赤外スペクトル測定によって野生下にある動物の発情状態の定量が可能となる。実際、来年度からは野生下にある個体からも尿を採取してモデルの精度を確認する予定である。本研究成果は、飼育下および野生下での希少種の繁殖性能の把握および繁殖効率の向上に貢献できることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究成果から、近赤外分光を用いてもある程度発情ホルモンおよびクレアチニン濃度を定量できることが判明した。そのため、今後は小型の分光器を用いて、野生下の個体から採取した尿にも分析を応用する。また、オランウータンだけでなく、チンパンジーおよびゴリラにも構築したモデルを応用する。さらに、本年度の研究成果から、オランウータンの正常出産時の3種のホルモンおよび1種のプロテアーゼ濃度の動態が明らかとなった。今後は、これらの検査項目における近赤外分光法を用いた迅速測定のモデル構築も目指す。
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Research Products
(21 results)
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[Presentation] どんなチンパンジーがストレスを感じている? :園館をまたいだ情報蓄積に向けて2014
Author(s)
山梨裕美, 寺本研, 森村成樹, 平田聡, 野上悦子, 森裕介, 田中正之, 松永雅之, 藤森唯, ゴドジャリ静, 鈴木樹理, 林美里, 木下こづえ, 村山美徳, 伊谷原一
Organizer
「ず~じゃん。」動物園大学4 in横浜
Place of Presentation
よこはま動物園ズーラシア(神奈川県横浜市))
Year and Date
2014-03-16
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[Presentation] チンパンジーの毛からホルモン測定~コルチゾルとテストテロンの関係について~2013
Author(s)
山梨裕美, 森村成樹, 寺本研, 平田聡, 野上悦子, 森裕介, 田中正之, 松永雅之, 林美里, 木下こづえ, 村山美穂. 伊谷原一
Organizer
Support (or African/Asian great Apes (SAGA) 16
Place of Presentation
高知県立のいち動物公園(高知県香南市)
Year and Date
2013-11-09
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[Presentation] Discrオランウータン(Pongo pygmaeus)およびチンパンジー(Pantroglodytes)における正常出産および死産時の尿中ホルモン濃度動態の検討2013
Author(s)
木下こづえ, 高井昭, 佐野祐介, 山本裕己, 松永雅之, 伊藤二三夫, 竹田正志, 穴見浩志, 尾崎康彦, 井上-村山美穂, 伊谷原一
Organizer
第19回日本野生動物医学会大会
Place of Presentation
京都大学時計台記念館(京都府京都市)
Year and Date
2013-08-31
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