2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01502
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山本 竜也 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 可塑性 / マカクサル / 運動機能回復 / 第一次運動野 / 腹側運動前野 / 赤核 / 損傷 / 神経回路 |
Research Abstract |
中枢神経系の損傷による運動機能障害が、残存する中枢神経系システムによって代償されるメカニズムの解明を目指す。これまでに、マカクサルを用いた行動学および脳機能画像解析により、皮質脊髄路を損傷した後に手指の把握運動が回復すること、その背景に大脳皮質運動関連領域(特に損傷対側腹側運動前野:co-PMv)による機能代償があることが明らかにされた。すなわち、損傷を受けた経路自体が再生しなくても、直接的な損傷の影響を免れた大脳皮質運動関連領域が代償的に機能することにより、運動機能が回復すると考えられている。しかし、このような機能代償領域においてどのような神経回路が新たに構築されるのかについては不明である。 本研究課題では、第一次運動野(皮質脊髄路を主に投射する領域)損傷マカクサルを作成し、損傷後の機能代償領域(co-PMv)から生じる運動出力経路の構造変化を脳機能画像解析(拡散テンソル画像解析)及び解剖学的トレーサー解析を用いて検証した。拡散テンソル画像解析により、運動機能回復時にはco-PMvから赤核へと向かう出力経路で顕著な構造変化が生じることが示唆された。運動機能回復時のco-PMvに解剖学的トレーサーを注入した結果、赤核の外側小細胞領域にトレーサー陽性軸索が観察された。この領域は、第一次運動野からの投射を豊富に受け、PMvからの入力には乏しいことが健常マカクサルより報告されている領域である。すなわち、co-PMvからこの領域へと向かう経路は第一次運動野損傷後に新たに形成されたと考えられる。また、このような投射は赤核のみならず、視床及び被殻においても観察された。本研究成果は、中枢神経系損傷後の機能代償領域から出力する経路で生じる構造変化が、運動機能代償に貢献することを示唆する。本研究成果の発展は、中枢神経系損傷後の機能回復技術の開発及びリハビリテーション医療の発展に繋がると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
拡張テンソル画像解析及び解剖学的トレーサー解析を用いて、マカクサル皮質脊髄路損傷後の機能代償領域で新たに生じる代償経路構造の解明が研究目的である。当初は、皮質脊髄路損傷を脊髄レベルに作成する予定であったが、再現性の高い損傷の作成が困難であったため、皮質脊髄路を主に投射する第一次運動野を損傷したサルを運動麻痺モデル動物として用いることにした。上記のように、研究計画通りに解析を進めることができており、また、一定の成果も挙げられているため、『(2)おおむね順調に進展している。』と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
上記研究成果は一頭の第一次運動野損傷マカクサルから得られたものである。現在は2頭の健常マカクサル及び2頭の第一次運動野損傷マカクサルに対する拡張テンソル画像解析及び解剖学的トレーサー注入を終えた段階である。今後は、これら個体における解剖学的トレーサー解析を進め、本研究結果の整合性を確認していく予定である。また、機能代償領域から新たに形成された経路が損傷後の運動機能回復に実際関与するのかを確認するために、ウイルスベクターを用いた経路特異的損傷実験を平成25年度末に予定している。
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Research Products
(5 results)