2013 Fiscal Year Annual Research Report
1細胞発光イメージングを用いた植物個体内における概日時計ネットワークの解析
Project/Area Number |
12J01530
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村中 智明 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 概日時計 / 発光イメージング / ウキクサ |
Research Abstract |
昨年度に得た、一細胞発光イメージングシステムの特性に関する知見を論文としてまとめて、国際誌に発表した。この論文はレポータの導入細胞の種類、レポータ導入細胞の発光特性、発光が分離可能な細胞間距離など、今後の単一細胞リズムの解析の基礎となる情報をまとめたものであり、本システムを利用した今後の研究全てにおいて基盤となる重要な論文である。 また、本研究ではウキクサ植物の種間比較が大きな目的となっている。受入研究室には4属にわたるウキクサ植物が培養されているが、その全てのウキクサで明瞭に発光リズムを測定できる培地条件を発見した。これにより培養条件により性質が変化するウキクサ植物の概日リズムを体系的に比較することが可能となった。そこで、4属のウキクサ植物のうちで代表的な5種から合計9株を選び、概日リズムを測定した。その結果、以下の知見を得ることに成功し、成果を国際誌に発表した。(1)明暗条件においてすべてのウキクサ植物は明瞭な日周リズムを示した。(2)連続明条件、連続暗条件におけるウキクサ植物が示す概日リズムには周期と安定性に多様性が見られ、ウキクサ植物内で概日時計システムが多様化していることが示唆された。 さらに、本研究の主目的である概日時計ネットワークの解明を目指して、リズム測定に適した培地で培養したイボウキクサを対象に、単一細胞概日リズムの詳細な解析を行った。その結果以下の成果を得ることに成功し、現在投稿論文を準備中である。(1)連続明条件では、細胞振動子のリズムは徐々に脱同期し、個体全体での時間情報の共有は長期間は維持されなかった。(2)個体全体では脱同期が観察された一方で、脱同期時の細胞振動子リズムの位相差は近傍細胞で減少する傾向が見られ、細胞間にリズムを同調させるような相互作用が働いていることが示唆された。これらの成果は概日時計ネットワークの実像に迫る上で重要な情報を提供すると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの主な成果は以下の3点である。(1)我々が開発した単一細胞発光測定システムの特性に関する論文をまとめ、国際誌に報告した。(2)研究員が開発したリズム測定に適した培地を用いて、4属5種のウキクサの概日リズム特性を体系的に比較し、ウキクサ植物における概日リズムの多様性を明らかにした。この結果は国際誌に報告した。(3)単一細胞発光測定システムと前年度に開発した解析手法を用いて、イボウキクサにおける細胞振動子の性質を詳細に分析した。その結果、個体全体では細胞振動子が顕著な脱同期を示すものの、局所領域では相互作用による同期が示唆されるとの知見を得た。以上のように、概日侍計ネットワークを解析する上での基盤となる知見を得ることに成功しており、来年度の研究成果も期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究室では新たに、現在までのマクロレンズ用いたイメージングシステムに加えて、顕微鏡を利用した高解像度イメージングシステムを構築した。さらに、昨年度より進めている光ファイバを用いた局所光条件操作装置の開発も実用段階まで進展している。また、光学フィルタを用いた、生物発光リズムと遅延器回向リズムの同時測定装置の開発も開始している。これらの新たな観測ツールと、これまでの研究で得られた知見を合わせることで、今後の研究では高等植物の概日時計ネットワークを多面的に解析することが可能になると考えている。また、現在までに様々な種類のウキクサが示す概日リズムを同一条件で測定できる条件を見出すことに成功している。ウキクサ植物は種によって維管束系の発達程度や植物個体のサイズが大きく異る。このような多様性を持つウキクサ植物を用いることで概日時計ネットワークと植物構造を結びつけることができると期待している。
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Research Products
(6 results)