2012 Fiscal Year Annual Research Report
寡占市場における産業政策および競争政策に関する理論的研究
Project/Area Number |
12J01593
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮岡 暁 大阪大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 水平的企業合併 / ライセンス供与 / 原価割れ販売 / 廉売規制 |
Research Abstract |
1.水平的企業合併とライセンス供与に関する研究 本研究では、企業間の水平合併が当該企業の持つ特許技術のライセンス供与インセンティブにどのような影響を与えるのかについて分析を行った。分析の結果、企業間の水平合併によって、当該企業が他企業に対して技術のライセンス供与を行うインセンティブが必ず阻害されることが明らかとなり、水平合併が市場集中度の上昇だけでなく、技術の普及の阻害というかたちでも社会厚生に対して負の影響をもたらしうることが理論的に確認された。しかしながら、既存の研究においても今回の結果と類似した結果が示されていることから、本研究は現在の状態ではまだ論文としてまとめる段階には至っていない。本研究については、上記の分析では捨象していた要素を加えて再度分析を行うなど、2年度目も継続して取り組んでいく予定である。 2.小売店による原価割れ販売と廉売規制に関する研究(松島法明氏(大阪大学)との共同研究) 本研究では、小売店の主要な販売促進手段の一つである、原価割れ販売(below-cost pricing)に焦点を当て、廉売規制(resale-below-cost law)によってこうした販売促進手段が禁止されることの効果について分析を行った。本研究の特徴は以下の2点である。第1に、本研究では小売店だけでなく、小売店に商品を供給するメーカーの存在も明示的に分析に取り入れた。第2に、現実の廉売規制に関する議論では、大型のディスカウント・ストアと個人商店のような規模の異なる小売店間の競争が議論の対象となることが多いため、この小売店間の規模の非対称性をモデルに取り入れた。分析の結果、廉売規制の導入によって小売価格が低下し、消費者の厚生が改善する可能性があることが示されるとともに、廉売規制が各経済主体に与える影響が小売市場の構造によって大きく変わる可能性があることも確認された。廉売規制の議論において市場構造を考慮することの重要性を指摘した点が、本研究の意義である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水平的企業合併とライセンス供与に関する研究については現在のところ大きな研究成果は得られていないが、廉売規制に関する研究については一定の意義ある成果を得ることができた。後者の研究については"Who benefits from resale-below-cost laws?"として論文にまとめる作業もすでに完了しており、今後は学会やセミナーでの発表を通じて内容を修正していく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
水平的企業合併とライセンス供与に関する研究については、これまでの分析ではAroraとFosfuriによる研究[Arora, A. and A. Fosfuri, 2003. Licensing the Market for Technology. Journal of Economic Behavior & Organization 52, 277-295.]の理論モデルを拡張する形で分析を行ったが、目新しい結果を得ることができなかった。今後は別の理論モデルをベースにした分析を行い、企業合併の影響について改めて検討を行う予定である。 一方、原価割れ販売と廉売規制に関する研究については、今後、学会やセミナーで研究報告を行い、そこで受けたコメントをもとに修正を行う予定である。修正後はDiscussion Paperとして公開するとともに、査読付き国際学術誌に投稿を行う。
|
Research Products
(2 results)