2013 Fiscal Year Annual Research Report
冷戦終結・ソ連解体後の地域・国際政治におけるチェチェン紛争
Project/Area Number |
12J01594
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
富樫 耕介 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(PD)
|
Keywords | キルギス(クルグズ)共和国 / 革命 / 旧ソ連地域の紛争 / チェチェン / コーカサス / 中央アジア |
Research Abstract |
本年度は、2013年4月から2014年1月までキルギス共和国での在外研究を行った。小生は、今までコーカサス地域の紛争に重点をおき研究を行ってきたが、「旧ソ連地域の紛争の類型化」のためには中央アジアの紛争や革命も比較対象に加え、検討するべきであるという問題意識を昨年より強く持ち始めた。当初の目的では、タジクへの調査渡航も考えていたが、キルギス研究に予想以上に時間を費やし、またキルギスにおける邦人のビザ要件が急に変更され、研究拠点があるキルギスから出国すると再度入国できないという恐れがあったため、断念した。他方で、キルギスの革命や民族紛争に関する研究基盤はある程度形成できた。紛争や革命の理解をゼロから短期間に形成する事は困難と思われた為、現地研究者と協力して彼らの学術的知見を学びつつ、研究を進める事とした。こうした取組みの成果は、日本のユーラシア研究所を通してキルギス共和国特集号として刊行する事ができた。 本年度の研究実績として第二に報告できるものは、昨年度に博士論文としてまとめたチェチェン紛争に関する研究である。本年度は、アメリカ・ボストンでの爆破テロ、ロシア・ヴォルゴグラードでのテロ、さらにはソチ五輪があり、コーカサス地域やチェチェン紛争に対する国際的関心が高まった年であった。小生も説明を求められる機会があり、解説なども執筆した。この際に、チェチェン紛争をいかに分かりやすく提示するのかという課題を感じる機会があった。そこで、博士論文で展開したチェチェン紛争の分析枠組みをより精緻なものとして提示する研究にも取組んで来た。これらはある程度まとめる事ができたので、研究論文などで公表できるよう引き続き取組んでいきたい。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は中央アジアの革命や紛争に対する理解を得て、これとヌーカサスの紛争を比較し、旧ソ連地域の紛争の類型化に取組もうと思っていたが、思いの外、時間がかかってしまった。またチェチェン・北コーカサス情勢への関心の高まりとこれに対応するための諸作業にも時間をとられた。こうした作業に取組むなかで、昨年、博士論文にまとめたチェチェン紛争について、必ずしも専門家ではない人々に分かりやすくその分析枠組みを提示する必要があるのではないかと感じ、これらに取組んできた事も当初目的としていた作業が遅れた要因であろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度、やや遅れてしまった作業に重点的に取組みたい。それは、①旧ソ連地域の紛争の類型化、②チェチェン紛争の包括的分析枠組みの提示である。①については、今年に入りウクライナ情勢が大きな関心を集めている。ウクライナやクリミアを本格的に分析対象に含める事は困難だが、「政体の人的・領域的範囲」という問題では、これらの地域で生じている事も小生が研究してきた事と重なる。従って、これも意識しつつ、中央アジア・コーカサスの紛争の類型化に取組みたい。②については、ある程度、本年度に作業に取組んだので、学会発表や論文投稿などで議論の精緻をはかっていきたい。今年は最終年度なので、研究課題に対する何らかの回答(枠組み)も提示できるようにしたい。
|
Research Products
(4 results)