2012 Fiscal Year Annual Research Report
雄マウスの社会認知機能制御におけるアンドロゲン受容体の役割の解析
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12J01653
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
仲田 真理子 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 社会認知機能 / マウス / 性ステロイドホルモン / エストロゲン受容体 / RNA干渉法 / 社会行動 / 部位特異的遺伝子ノックダウン |
Research Abstract |
【目的】遭遇した他個体が同性か性交可能な異性か、また、慣れ親しんだ仲間であるのか、見知らぬ他人であるのかを識別しする社会認知機能は、社会の中で適切な行動を取るために必要不可欠である。しかし、その脳内調節機構は未だ明らかになっていない。本研究では性ステロイドホルモン受容体に着目し、RNA干渉法を用いて、脳部位特異的なエストロゲン受容体αまたはβの発現の抑制がマウスの社会認知機能と社会行動に及ぼす影響を検討した。 【方法】実験には成体オスマウスを用いた。他個体に関する情報を統合し、社会認知機能とその後の社会行動に重要な役割を持つことが報告されている両側の扁桃体内側核に、エストロゲン受容体αまたはβの発現を阻害(ノックダウン)するshRNAを運搬するアデノ随伴ウイルスを投与した。ウイルス投与後、(1)発情メスと非発情メス、(2)発情メスと性腺保持オス、(3)性腺保持オスと性腺除去オス、(4)以前に遭遇した他個体と新奇な他個体のそれぞれを識別する能力をテストした。さらに、性行動、攻撃行動についても検討を行った。 【結果・考察】扁桃体内側核においてエストロゲン受容体αをノックダウン個体は、(1)発情メスと非発情メス、(2)発情メスと性腺保持オス、(3)性腺保持オスと性腺除去オスのそれぞれをコントロール群のマウスと同様に識別することができた。一方、エストロゲン受容体βノックダウン群は、発情メスと非発情メスを区別することができなかった。さらに、エストロゲン受容体α、βノックダウン群ともに、以前に遭遇した他個体と新奇な他個体を識別することができなかった。以上の結果より、扁桃体内側核のエストロゲン受容体αとβはそれぞれオスマウスの社会認知機能の異なる側面に必要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実験の順序に変更はあったものの、計画していた実験を進行している。当初の計画では1年目に行う予定であった、性ステロイドホルモン受容体遺伝子欠損(ノックアウト)マウスを用いた社会行動の測定を行わなかった代わり、計画では2年目に予定していた、性ステロイドホルモン受容体の部位特異的ノックダウンによる行動変容の解析を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
行動実験終了後のマウスの脳サンプルを用いて、社会認知機能の調節に関与する神経ペプチドおよびその受容体の発現について組織学的解析を行う予定である。また、性ステロイドホルモン受容体遺伝子欠損マウスを用いた行動解析、組織学的解析も並行して行う。
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