2012 Fiscal Year Annual Research Report
ループ量子重力理論の初期宇宙揺らぎへの適用とPLANCK衛星による観測的検証
Project/Area Number |
12J01693
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 紘一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 量子重力 / massive gravity |
Research Abstract |
今年度は、まず、ループ量子重力理論の経路積分形式に対応するspin-foam modelを用いて、宇宙の創生に関する研究を行った。ただし、今回は簡単のために時間1次元、空間2次元の3次元Euclidean時空でのspin-foam modelを用いてtopology changeを調べた。無の状態から球面やトーラス面などの異なるtopologyをもつ2次元面が生成される過程を調べて、それらの生成確率の比を計算した。しかし、計算の手法に不定性が残り、手法ごとに異なる計算結果が得られることが分かった。この点に関して、どの手法を用いるのが妥当かは現在研究中である。 また、今年度はmassive gravityに関する研究も行った。現在の宇宙の加速膨張を説明しようとしたとき、gravitonの質量がゼロでない可能性が残り、このような重力理論はmassive gravityと呼ばれる。すると当然、gravitonの質量による初期宇宙揺らぎ等への影響も考えられ、量子重力の面からも興味深い。ただしmassive gravityにもいくつかの種類があり、純粋なmassive gravity以外にもbi-metric gravityやmulti-metric gravity等もある。しかし、これらが理論的にconsistentであるかどうかは自明の問題ではない。特にmulti-metric gravityについては、一部のクラスしかconsistentであることが示されていなかった。そこで、multi-metric gravityでの残りのクラスのconsistencyの研究を行った。結果として、それら残りのクラスがすべて、負の運動エネルギーを持った余分な自由度を含むinconsistentな理論であることを示して、multi-metric gravityにおいてconsistentなクラスを確定させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ループ量子重力理論は非常に難解な理論であり、研究には時間がかかるが、今回は簡単なモデルを調べることでより現実的な系を調べるための第一歩とすることができた。 また、massive gravityの方面からも同時に研究を行い、論文を1つ発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の項で前述した、spin-foammodelを用いたループ量子重力理論の計算手法に現れた不定性の研究を行い、計算手法の確立を目指すとともに、ループ量子重力理論における時空の生成過程を調べる。また、massive gravityや、multi-metric gravityの方面からも同時に研究を行い、gravitonの質量が、初期宇宙揺らぎや量子重力効果に及ぼす影響を調べる。
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Research Products
(3 results)