2012 Fiscal Year Annual Research Report
巨大な質量比を持つ冷却異種原子気体を用いた強相関量子多体シミュレータ
Project/Area Number |
12J01698
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 秀太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | レーザー冷却 / 冷却原子系 / 光格子 / 量子シミュレータ / 強相関系 / 精密分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、レーザー冷却された相互作用可変な6Li原子系に、レーザー冷却・量子縮退が実現されている原子種としては最も重いYb原子を導入し、このYb原子を(1)局在不純物、(2)冷媒およびプローブとして用いることでより広範な強相関系の「量子シミュレーション」を実現することである。本年度はまず、Yb原子を(Li原子と比較して)十分局在させることに必要な、光格子系の準備を行なった。従来の装置と光格子用の光学系とが共存できるよう改造し、また光トラップ形状・蒸発冷却などを最適化することで、Yb-Li同時縮退気体を1064nm光格子に導入することに成功した。これまで当研究室では、Yb原子に対して波長532nmのレーザー光による光格子系は実現されていたが、Yb原子に対する1064nm光3次元光格子は、本研究で初めて実現された。特に、波長(格子間隔)が長くなることでトンネリング時間が長くなるため、532nm光格子の場合と比較し十分ゆっくり(断熱的に)光格子を導入しなければならないが、適切にパラメータを選ぶことで、各サイト間のコヒーレンスを保ったまま光格子へ導入、コヒーレンスが保たれていることを示すYb原子ボーズ・アインシュタイン凝縮(BEC)の多重物質波干渉の観測に成功した。さらに、光格子深さを深くするとトンネリングが抑制されコヒーレンスがなくなり干渉縞が消失することも確認し、また、Li原子の存在により、このYbBECの多重物質波干渉の干渉縞の明瞭度が下がることを実験で観測した(学会発表[3])。なお、Ybの準安定励起3P2状態とLiとのフェッシュバッハ共鳴探索のため、平成26年度に計画していた3P2精密分光実験の一部を前倒しして行なった。これらに加え、本研究で実現された1064nm光格子系と従来の532nm光格子系を組み合わせ、平坦バンド強磁性との関連で興味深い「リープ型光格子」を実現するための光学系の準備を新たに始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では本年度は(1)Yb-Li混合系を光格子に導入し、(2)Yb原子(局在不純物)に由来するLi原子のアンダーソン局在を観測することを目標としていた。現時点で、前者は実現できたが、後者はまだ観測できておらず、平成24年度分の研究計画の達成度は半分程度であると言える。一方で、平成26年度で計画していた精密分光の実験系を前倒して構築、分光データも取得し始め、また平坦バンド強磁性の量子シミュレーションとの関連で興味深い「リープ型光格子系」の準備も進んだため全体としておおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、まず、Ybの準安定励起3P2状態とLiとのフェッシュバッハ共鳴探索をさらに進める。フェッシュバッハ共鳴が利用可能になれば、Yb-Li間の散乱長(相互作用)を強くでき、Yb原子の"不純物"としての効果が強くなり、アンダーソン局在が観測しやすくなると期待できる。また、"不純物"の相互作用を動的に変えられるようになるため、Li原子のフェルミ面の動的変化(アンダーソンの直交定理)の研究も検討している。さらに、本年度後半から開始した「リープ型光格子」は、平坦バンド強磁性の"量子シミュレータ"として非常に面白い系となっており、今後はアンダーソン局在の研究と並行してこちらの系の研究も行なう。
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Research Products
(3 results)