2013 Fiscal Year Annual Research Report
巨大な質量比を持つ冷却異種原子気体を用いた強相関量子多体シミュレータ
Project/Area Number |
12J01698
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中島 秀太 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | レーザー冷却 / 冷却原子系 / 光格子 / 量子シミュレータ / 強相関系 / 精密分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、量子縮退が現れている原子種の中で最も軽いアルカリ原子でるリチウム(Li)と、最も重い原子であるイッテルビウム(Yb)を、個別にあるいは同時に、多様な光格子系に導入し、より広範な強相関系の「量子シミュレーション」を実現することである。本年度はまずLi-Yb混合系でのYb原子狭線幅(^1S_0-^3P_2,507nm)遷移分光実験に用いる狭線幅507nmレーザ光源の改良を行った。基本波1014㎜光源にリトロー型半導体レーザを導入し、また従来よりも高出力なテーパアンプ・ファイバー結合型SHGモジュールを導入することで線幅と出力パワーを改善した。これは準安定励起(^3P_2)状態Yb原子を大量かつ安定に生成するために重要である。また光格子中でLi-Yb混合系の507nm分光実験を行い、測定精度の範囲ではYb単体とLi-Yb混合系で分光結果に大きな差がないことを確認した(論文[1]、発表[4])。また前年度後半から開始したリープ型光超格子の研究を進め、リープ型光超格子を実現した(発表[1-3])。このリープ型光超格子に^<174>Yb原子のボース凝縮体を導入し、その多重物質波干渉パターンからリープ型格子配置が実現されていることを確認、また^<173>Yb原子のフェルミ縮退気体をリープ型光超格子に導入し、第2バンド(平坦バンド)まで原子が導入されていることをバンドマッピングの手法により確認した。これに加え、リープ型光超格子を形成する複数の光格子ビームの位相と振幅を動的に制御することで、「トポロジカル電荷ポンプ」と呼ばれる"量子化された"原子の移動(ポンプ)現象を観測した。この量子化は量子ホール効果と同様に「チャーン数」と呼ばれるトポロジカル不変量と関係づけることができ、近年注目されているトポロジカルな量子効果を冷却原子系で観測できるという点で興味深い成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度研究計画では(1) Li-Yb混合系でのYb原子精密分光とYb(^3P_2)-Li間の磁場Feshbach共鳴(MFR)の探索、(2) Yb原子を"局在不純物"としたLi原子系でのAndersonの直交定理の検葺、(3) Lieb型光超格子の実現と平坦バンド強磁性の観測、を主な弓標とした。このうち(1)についてはLi-Yb混合系での精密分光は実現したが、MFRは確認できず、このMFRを利用する(2)も実現できていない。(3)は予定通りLieb型光超格子を実現し、またこの系にYb量子縮退気体を導入して平坦バンド強磁性相実現の前段階まで到達した。それに加え、光超格子を動的に制御することで「トポロジカル電荷ポンプ」と呼ばれる現象の観測に成功した。総合して研究はおおむね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
Yb(^3P_2)-Li間の場Feshbach共鳴(MFR)は、Li-Yb混合系を用いた量子シミュレータの現実において要である。しかし現時点でこのMFRは確認できておらず、また昨年このMFR近傍で原子ロスが多いという理論予測も出され、今後Li-Yb間のMFRの利用を前提として研究を進めることは妥当ではないと考えている。その一方、Lieb型光超格子の研究は光超格子系の実現・Yb量子縮退気体のLieb型光超格子への導入など着実に進展し、またこの光超格子系の動的制御により冷却原子系における「トポロジカル電荷ポンプ」の実現も可能となり、次年度はこの(動的)光超格子系を用いた研究に重点を置き推進していくことが有望であると考えている。さらに本年度に^3P_2, 分光用の光源を改良したことで、(^3P_2)Yb-Li間の相互作用だけでなく(^3P_2)Yb-(^3P_2)Yb間の(長距離の)磁気双極子・双極子相互作用の研究も可能になったため、スピン・スピン相互作用に由来する局在スピンの磁気秩序の観測も検討している。
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Research Products
(6 results)
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[Presentation] Lieb型光格子の実現2013
Author(s)
西尾卓衛, 中島秀太, 田家慎太郎, 小沢秀樹, 高橋義朗
Organizer
日本物理学会 2013年秋季大会
Place of Presentation
徳島大学 常三島キャンパス
Year and Date
2013-09-26
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