2013 Fiscal Year Annual Research Report
初期ストア派の政治哲学-法とポリスについての議論の再構築
Project/Area Number |
12J01699
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 愛 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | ストア派 / ヘレニズム / コスモポリタニズム / 自然法思想 |
Research Abstract |
昨年度は、主に以下のような成果を発表した。①初期ストア派におけるポリスと法のそれぞれの概念を明確化した。とくに重要な点として、従来あまり指摘されなかったが、ストア派におけるポリスの再定義は法の再定義を前提としていることを論じた。すなわち、ストア派は倫理学において法を知者(有徳な人間)の徳として再定義することによってポリスを知者を市民とする国家として再定義したのである。また、②初期ストア派における理想的共和国家の議論とコスモスーポリスの議論の関係という問題について、つぎのような発展的な解釈を提案した。すなわち、ゼノンにおいて論じられている自然学的なポリスの概念と倫理学的なポリスの概念がクリュシッボスにおいてコスモスーポリスとして統合されたということを論じた。すなわち、ゼノンは徳としての法に従う知者を市民とする共同体が真の国家であるという主張を彼の倫理学においてなし、それとは独立した主張として宇宙は宿命を法とする国家にたとえることができるという主張を自然学においてなし、その後クリュシッボスにおいてこれらの二つの主張は宇宙全体を法とする国家という思想に結実したのである。さらに③「全人類の協同関係」という概念は初期ストア派においては論じられず中期ストア派のパナイティオス以降に形成されたと従来考えられる傾向があったが、このような解釈に反論し、すでに初期ストア派においてこの概念が確認されるということを主張した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初期ストア派の政治哲学を再構築するという目的に基づいた研究を行い、その成果を国内外に発信することができた。戎果を単行本という形で多くの人に公にすることはまだでぎていないので、このことは今後の目標としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、①ストア派の倫理学における規則を考察する。具体的には、ある行為が「適切な行為」であることの根拠は何らかの規則の体系に求められるのかそれとも個別的な状況に求められるのかという問題の解決を図る。(この問題については、日本西洋古典学会において、「ストア派の倫理学における行為と規則についてという題目で発表する予定)また、②「自然によって法が存在する」という思想がプラトン、アリストテレスによってどのように論じられているかを考察し、ストア派における自然法思想と比較することによってストア派の思想の特徴を明らかにすることを目指す。
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Research Products
(5 results)