2012 Fiscal Year Annual Research Report
シナプス可塑性の起こり易さを調節する分子機構の解明
Project/Area Number |
12J01739
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長崎 信博 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | シナプス可塑性 / 抑制性シナプス / CaMKII |
Research Abstract |
シナプス可塑性の起こり易さは、記憶や学習の能力と関連する。本研究では、その分子メカニズムを明らかにすることを目指す。過去の研究において示した、小脳プルキンエ細胞におけるカルモジュリン依存性キナーゼH(CaMKII)のサブタイプ(αおよびβ)の発現バランスが、抑制性シナプス応答の長期増強(RP)の起こり易さを調節する事実に基づいて、どのような場合にCaMKIIサブタイプの発現が変化するかを検討した。具体的には、ラット小脳を分散培養して様々な条件下で免疫染色を行い、CaMKIIサブタイプの発現を測定した。その結果、培養直後の若いプルキンエ細胞ではRPを起こり易くするβタイプの発現が高く、プルキンエ細胞が成熟するにつれてRPを起こりにくくするαタイプの発現が増加することが分かった。また、成熟したプルキンエ細胞において神経活動を阻害するとβタイプの発現が抑制され、神経活動を亢進するとβタイプの発現が増加する傾向にあった。つまり、発達時期や神経活動の履歴に応じてCaMKIIサブタイプの発現が変化し、RPの起こり易さが変化する可能性が考えられた。そこで、プルキンエ細胞にホールセルパッチクランプを行い、神経活動の履歴がRPの起こり易さへ与える影響を検討した。RPを引き起こす強い脱分極刺激の前に、弱い脱分極刺激を行ってもRP誘導に影響しなかったのに対し、事前にやや強い脱分極刺激を行うと、その後の強い脱分極刺激でRPが起こらなくなった。以上の結果から、動物の発達時期や神経活動の履歴に応じてCaMKII発現が変化することで、RPの起こり易さが柔軟に調節されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
どのような状況でCaMKIIサブタイプの発現が変化するかを明らかにできたこと、また特定の連続刺激によりRPの起こり易さが変化することを示せた点は、目的の達成に向けて着実な進展である。一方で、依然両者の実験結果に直接的な因果関係を示せていない点が今後の課題である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、神経活動・CaMKIIサブタイプの発現・RPの起こり易さの3者の関係を明確にしていく。特に、同一の神経活動操作がCaMKII発現とRPにどのような影響を与えるかを明らかにする。
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Research Products
(2 results)