2012 Fiscal Year Annual Research Report
中国南北朝時代における二仏並坐像に関する研究-雲岡石窟を中心に
Project/Area Number |
12J01844
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
熊坂 聡美 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中国南北朝時代 / 雲岡石窟 / 二仏並坐像 / 仏教美術 |
Research Abstract |
本研究は雲岡石窟を再評価するための研究である。曇曜五窟から第三期諸窟まで、雲岡石窟全体における造営思想の変遷を明らかにし、雲岡石窟が北魏各時期、各地の石窟造営にどのような影響力を有していたのかを二仏並坐像そのものの量的推移や空間における役割の変化等から探る。また、二仏並坐像とともに表された尊像や図像などの情報を総合し、仏教学研究の成果も参照することで北魏における各地の仏教理解の様相の一端を明らかにすることを目指している。 第1年目である平成24年度は、修士論文の成果をさらに発展させ、雲岡石窟曇曜五窟(460年代造営。第16~20窟)の二仏並坐像が石窟空間の中で持つ意義を明らかにすることを目指していた。2013年7月に雲岡石窟研究院において前年までの研究成果を報告し、現地研究者との間で意見交換をすることができた。また滞在期間中に同研究院の協力を得て石窟内の調査をおこない、以前よりも詳細な記録写真を得た。その資料を元に9月末の美術史学会東支部例会にて口頭発表をおこなった。その内容は平成25年度中に発表予定である。また、次年度第二期諸窟と他地域の造像を比較するための準備として、2013年2月末~3月上旬にかけて、雲岡石窟第6窟と密接な関係をもつとされる王母宮石窟(甘粛省)などの調査をおこなった。 今年度の成果としては、曇曜五窟内の仏寵(従来一様に追刻とされ、ほとんど注目されることがなかった)に対する分析を通じ、一部の仏龕については石窟の造営とほぼ同時に制作されたものであることを認めた。同じ460年代に制作された仏龕であっても、形式の変遷が認められる。石窟壁面の装飾計画との関係は、石窟や仏寵の規模に応じた相違を認めた。結論として第18窟が仏寵を石窟内の装飾として意図的に取り入れ始めた転機であり、第17、16窟はその傾向をさらに強め、第二期諸窟の厳密な壁面構成へと連なっていくと考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究自体は進展している。但し修士論文の成果を発表するためには、現地調査に基づく資料の補足やいくつかの課題を乗り越える必要があり、未だ論文としての発表には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年目は主に雲岡石窟第二期諸窟の造営計画の検討をおこなう。まずは第1年目におこなった曇曜五窟の仏寵の分析から得られた問題点をもとに、第16、17窟(曇曜五窟後期、460年代後半~470年代前半造営)と第7、8窟(第二期諸窟、470年代前半造営)の間の関係に注目し、曇曜五窟から第二期諸窟にかけて、石窟空間の構成や造像様式がどのように変化し、それが他地域の石窟ないし造像にどのような影響を与えたのかという点を明らかにする。引き続き、現地調査や図版資料の分析を進めていきたい。
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Research Products
(1 results)