2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国南北朝時代における二仏並坐像に関する研究-雲岡石窟を中心に
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12J01844
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
熊坂 聡美 筑波大学, 大学院人間総合科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 雲岡石窟 / 中国仏教美術 / 北魏 |
Research Abstract |
本研究の目的は雲岡石窟の再評価である。曇曜五窟(第一期)から第三期諸窟まで、雲岡石窟全体 の造営思想の変遷に注目し、雲岡石窟と他地域との関係を考察する。第2年目である平成25年度は、第1年目の不足を補うとともに、雲岡石窟第二期から第三期にかけての過渡期の造像の特徴や窟龕の構成の変化について明らかにすることを目指していた。具体的には、第11~13窟外壁の窟寵に注目し、調査・分析をおこなった。この一帯には小規模の窟龕が合計60以上開かれているが、そこには仏龕から小窟への変化を見ることができる。窟内外がくまなく装飾され、完成された、一対の大規模石窟群が第二期諸窟であるのに対し、この第11~13窟外壁に見える小規模石窟の出現と流行は、雲岡第三期の最も大きな特徴のひとつであり、494年の洛陽遷都に伴う造営主体の変化(北魏皇室から貴族らへ)を反映した現象である。同時期の西方諸窟には同様の過渡期的状況を見ることはできないため、第二期諸窟の造営後に連続的に開かれたのがこの一帯の窟龕であると考えられる。第二期から第三期にかけて継承された要素、あるいは新たに採用された要素を明らかにし、それらがどのように小窟内の空間を構成したのかを分析するにふさわしい窟龕群であり、それによって、第三期の造像活動についての理解を深めることができ、将来的にはいわゆる「三壁三龕窟」の出現の問題や第38窟など窟内の図像構成に統一的な思想が働いていたのかどうか見解の一致しない窟に対しても、新たな観点からの見解の提示が可能になると考えている。 今年度9月には雲岡石窟研究院における研究会で初期段階の報告をおこなったが、現在は分析の途上にあり、今年度の前半で不足している資料を補う必要がある。研究成果は平成26年度中に発表する予定である。なお、今年度は前年の研究成果をもとに蘭州大学、清華大学において口頭発表をおこない、多くの研究者と意見交換をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究自体は進展している。但し昨年の調査に基づく研究成果を発表するためには、現地調査によって確認すべき問題、収集の必要な資料が残されているため。
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Strategy for Future Research Activity |
二仏並坐像に注目しながら、雲岡と他地域の造像との比較分析をおこなうことの必要性は変わらないものの、雲岡石窟内部には考察の必要な問題が数多く残されていることも事実である。龍門石窟や義県万仏堂石窟など、特に関係の強いいくっかの石窟については今年度中に調査をおこない、最終的には雲岡とそれらの石窟を関連付けて考察していく必要があるが、まずは雲岡における石窟の造営思想を丁寧に考察し、その変化を明らかにすることが先決であり、今後も注意深く考察を続けていく。
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Research Products
(3 results)