2012 Fiscal Year Annual Research Report
公立小学校に在籍するニューカマーの児童のメンタルヘルスに関する研究
Project/Area Number |
12J01938
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
山田 有芸 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 日本語指導 / 支援ニーズ / ソーシャルサポート / ニューカマー / 小学校 |
Research Abstract |
本研究は、家庭内言語が外国語のニューカマーの児童(以下、ニューカマーの児童)の支援ニーズを、メンタルヘルス、言語力、学力の面から総合的に検討した点に意義がある。また、同児童に対する支援をと支援ニーズの関係を明らかにした。これら包括的検討の意義は、メンタルヘルス、言語習得、学習理解が相互に関連すること(Kugler & Price, 2009 ; Marshall et al., 2005)、それらに基づく支援ニーズが実際に受け取っている支援との関係で生じるためである。これまでは、学校の教員に対して学校の支援について尋ねる研究と、ニューカマーの児童生徒の支援ニーズを明らかにする研究とに大きく分かれて蓄積されてきた。本研究では、支援と支援ニーズを共に取り上げることで、支援ニーズに対応する支援、現行の施策評価といった実践に貢献でき、支援ニーズの包括的な検討が文献に貢献できる点に、重要性をもつ。 具体的な研究課題における成果は以下の通りである。1.ニューカマーの高学年児童が学校においてもつ支援ニーズについて明らかにする回顧法に基づく質問紙調査のデータ回収、分析を行った。日本語指導に対して肯定的な評価がなされていること、授業中や試験など異なる場面に応じて支援が求められていること、教員が学校に関連する支援で重要な支援提供者として認識されていることを明らかにし、学校で教員に求められる具体的な支援内容を示した。2.フィールドワークと保護者への質問紙調査を実施し、家庭で日本語を使う環境にないニューカマーの児童の支援ニーズと学校における支援の関係、その変化について検討を行った。児童の日本語習熟度に対応する支援ニーズがあることを明らかにした。3.ニューカマーの児童自身の支援ニーズ、教員によるニーズ評価、教員自身の支援ニーズについて、フィールドワークと面接調査を行い、質的分析を行った。教員間のニーズ評価の違い、取り出し指導をめぐる問題が明らかとなり、校内体制の整備が支援提供上重要であることを示した。結果を日本教育心理学会で発表を行った。4.ニューカマーの児童の過去・現在・将来における支援ニーズと支援の関係について、面接調査と教員への質問紙調査を行い、調査を継続中。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
詳細な検討とそれに先んじるデータ収集を行うため、交付申請書記載の研究課題から内容の統合や必要な追加修正等を行った上で、今年度の研究目的・計画通り、下記を行ったため:1.先行研究の検討、2,質問紙調査・面接調査・フィールドワークの実施、3.データ収集、4.データ分析、5.研究発表、論文の投稿に向けた執筆。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、上記研究課題1~3の最終的な検討、関係者への結果報告、発表(日本教育心理学会等)・論文執筆(日本社会福祉学会、異文化教育学会等)を行う予定である。また、研究課題4は、継続中の調査の実施と修了後、上記同様、データ分析(修正版グラウンデッドセオリー)と結果報告等へと移行する。 研究課題2の小学校におけるフィールドワークは継続する。加えて、学校で実施されている支援の詳細についても明らかにするため、学校の教員を対象とした質問紙調査を新たに行う予定である。広範囲に亘る地域で実施し、国内状況を明らかにするようにする。質問紙の内容は、施策上中心的な学校の支援として行われている日本語指導、日本語指導担当教員について主に尋ねるものとする。
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Research Products
(1 results)