2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J01944
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
森井 良 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | アンドレ・ジッド / 経済学 / 連帯主義 / シャルル・ジッド |
Research Abstract |
当年度の報告者はフランスの作家アンドレ・ジッドにおける経済(学)の問題を、1890年代後期の作品群を主要なコーパスに据えながら読み解き、そこで作家が政治経済にまつわる同時代的文脈をどのように受容し、作品のうちに反映させていったかを検討した。前期はジッドのテクストの内在的研究を深化させることにあて、具体的には全作品の読解と周辺資料(日記、書簡)の読み込みを行ったが、その作業を通してある程度までジッド作品に現れる経済的表象を体系化することに成功した。また同時期のジッドの伝記的事実の確認については、友人たちとの書簡や先行する実証主義研究を参照することで対応し、特にノルマンディーでの所有地経営と行政者としての経験に関してその実態を把握することができた。後期からは同時代の政治経済史研究に入ったが、特に1890年代から流行しはじめた連帯主義について、代表的イデオローグ(レオン・ブルジョワ、エミール・デュルケイム、シャルル・ジッドなど)の著作や関連研究書を参照しながら、知見を深めた。ジッドと連帯主義との関連は今までのジッド研究で言及されてこなかったテーマであり、そのテーマを考えるにあたっては、ジッドとその叔父であり経済学者でもあったシャルル・ジッドとの関係が重要視されるべきなのだが、その関係の調査については、両者のテクストの比較参照だけでなく、同時代人や伝記作者の証言にも依拠しつつ検討を行った。とりわけ叔父から甥への直接的影響を測るうえで重要な書簡に関しては、未だ散在したままで公開されていないものがほとんどだったが、パリ大学付属ジャック・ドゥーセ図書館に保管されたシャルル・ジッドの手紙の一部を閲覧することが可能になったため、その解読から得られた内容を本研究に組み入れることができた。報告者は以上の成果の一部を10月に神戸大学で行われた日本フランス語フランス文学会全国大会において口頭発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目の年次計画で挙げたタスクはほぼ完了し、二年目分のものにも着手することできた。ただ、資料調査で得られた情報の整理が完全ではなく、調査・読解の過程で出来した小テーマの検討も必要になっているため、一点下げて(2)の区分で評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も年次計画に沿いつつアンドレ・ジッドとシャルル・ジッドの思想の関連性について検討を進め、テクスト読解から導きだされたテーマ(消費、贈与、貸借など)を関連書籍や同時代の知を参照しながらさらに体系化し、分析を深めてゆく。また、研究の進捗具合によっては、来年度から博士論文の執筆段階に入りたいと考えている。
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Research Products
(1 results)