2012 Fiscal Year Annual Research Report
新規因子によるプラスミドを用いたヒト血球細胞からの人工多能性幹細胞誘導効率の上昇
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12J01971
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山川 達也 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | iPS細胞 / エピソーマルベクター / GLIS1 / 転写因子 / Nikon BioStationCT |
Research Abstract |
A)血球細胞からのiPS細胞作製効率の改善 従来のレトロウイルスを用いた手法では、複数の因子がiPS細胞作製効率を上昇させることが報告されている因子が複数ある。申請者はこれまでの研究でこれらの因子を用いて、プラスミドを用いたヒト線維芽細胞からのiPS細胞作製効率に影響を与える因子の評価系を確立し、これらの因子について解析を実施した。その結果、GLIS1がプラスミド法においても効率を有意に上昇させた。そこで、将来のiPS細胞の細胞源として期待されている末梢血由来血球細胞でもGLIS1による誘導効率の上昇効果が見られるか同様の効果が認められるかを検討した。末梢血から分離した単核細胞に5因子(OCT3/4、SOX2、KLF4、L-MYC、LIN28)とGLIS1をそれぞれ発現するプラスミドベクターを導入した。た際に、iPS細胞誘導効率が見られるかはを作製されたヒトES細胞様コロニーの数から検証検討した。誘導初期の培地には、αβ T cell細胞分画、またはnon TおよびB cell細胞以外の単核細胞分画の増殖をそれぞれ優位に促進するサイトカインをそれぞれ加えることで、両細胞集団集団においてGLIS1の効果を検討した。その結果、両細胞集団において若干の誘導効率の上昇はが見られたものの、線維芽細胞で見られたものと比べその効果は非常に弱く、p53に対するshRNAを用いた場合と比べても上昇は少なかった誘導効率が低い結果であった。 B)ハイスループットスクリーニングによる新規因子探索 1)初期化促進因子のハイスループットスクリーニング系の立ち上げ 既存の限られた因子のみでなく、新規のの多数の因子を評価するために、確立した評価系を発展させたを発展させ。誘導効率の指標として、各因子を用いた際に作製されるヒトES細胞様コロニー数を用いている。自動ライブセルイメージングシステムNikon BiostationCTとその解析ソフトCL-Quantにより、自動でコロニー数を計測する系を立ち上げた。なお、CL-Quantに用いている本実験専用のヒトES細胞様コロニー識別プログラムはNikon社の協力のもと作製した。、約2000個の因子からなるヒトcDNAライブラリーを用いたスクリーニング系を立ち上げ、iPS細胞誘導効率に影響を与える因子のスクリーニングを行った。このライブラリーには約1,700個の転写因子と約300個のキナーゼが候補として含まれている。各因子を用いた際に作製されるヒトES細胞様コロニー数を、誘導効率の指標として用いた。自動ライブセルイメージングシステムNikon BiostationCTとその解析ソフトCL-Quantを用い、自動的にコロニー数を計測する系を立ち上げた。なお、CL-Quantに用いた本実験専用のヒトES細胞様コロニー識別プログラムはNikon社の協力のもと作製した。 2)ハイスループットスクリーニングによる新規因子の同定 上記のスクリーニング系を用いて、約2000個の因子からなるヒトcDNAライブラリーを探索している。このライブラリーには約1,700個の転写因子と約300個のキナーゼが含まれている。これまでに1400個の転写因子についてのiPS細胞の誘導効率へ与える影響を調べた。その結果、約3%の因子において2倍以上の効率上昇が見られた。その中でも、特に高い誘導効率を示す2因子に関して詳細な解析を行う事にした。この2因子は、iPS細胞やES細胞などの多能性幹細胞での発現が線維芽細胞より低いにもかかわらず、iPS細胞誘導初期に過剰発現させる事で誘導効率を上昇させた。、また2因子が共通のタンパク質ドメインを持つ事がわかった。また、スクリーニングに用いた線維芽細胞のドナーと以外の年齢や、性別が具なるドナーから採取したの線維芽細胞を使用した場合からの誘導法や、遺伝子導入にレトロウイルスベクターを用いた場合方法でも2因子によるのiPS細胞誘導の促進効果が見られる事を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究計画についてはおおむね順調に進展していると判断される。当初予定していたGLIS1を用いて作製したips細胞の機能解析は一部しか行っていない。これは実験の結果、血球細胞からの誘導効率を上昇させるという目標にGLIS1が合致しなかったためである。スクリーニング系の発展についてはNikon BioStationCTを導入することで、コロニー数の計測を自動化し、スループットの上昇に成功した。そのため、ips細胞の作製効率に影響を与える因子のスクリーニングは順調に進展し、既に誘導効率を高く上昇させる因子も見つかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
血球細胞からの誘導効率を上昇させるという目標にGLIS1が合致しなかった。しかし、本結果は末梢血由来のab T cell分画からの誘導実験の結果である。そのため、B cell等の分画や謄帯血由来の細胞についても実験を行う予定である。スクリーニングの結果得られた誘導効率を特に高く上昇させる2因子に関してさらに詳細な解析を行う。この2因子は共通のタンパクドメインを持つことから、そのドメインを介して体細胞の初期化に関与していると思われる。本スクリーニングからは誘導効率を上昇、もしくは減少させる因子が多く見つかっている。これらの因子を複合的に解析することで、今まで明らかにされてこなかった初期化のメカニズムに迫ることができるのではないかと考えている。
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