2012 Fiscal Year Annual Research Report
異なる環境に生育するシャジクモの生態的分化をもたらすオルガネラゲノム遺伝子の解明
Project/Area Number |
12J01993
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 将 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シャジクモ / 生態的分化 / 種分化 / 自然選択 / 車軸藻類 / Simple Sequence Repeat |
Research Abstract |
本研究の目的は、シャジクモの生態的2型をモデルに、種分化の初期段階における生態的分化をもたらした適応的な遺伝子を探索し、最終的に特定することである。生態的分化の原動力を分子レベルで明らかにすることで、生物多様性を創出する分子基盤に理解を与えることに貢献する。本研究全体の計画における解析には、新規に採集するシャジクモの集団、ならびにこれまでの研究で得られた株の一部を材料として供する。このため、初年度の計画通り日本全国の様々な水環境において材料収集を実施した。採集のための野外出張を9回実施し、その結果43地点の集団を発見しサンプルを収集した。さらに、種同定の依頼として譲渡された車軸藻類(アウトリーチ活動の欄を参照)のサンプル中に確認された40集団のシャジクモもサンプルとすることができた。今年度のみで今後の解析を実施するために十分な材料といえる合計83集団599個体の収集することができた。これらの材料を用い、核ゲノム・オルガネラ両ゲノムについて、これまでよりも多くの多型領域を用いて自然選択検出のための集団遺伝学解析・進化生物学的解析を行い、生態的2型間の自然選択をこれまでの研究よりも確かに検証/検出する計画である。このために必要な、シャジクモの多型DNA領域のマーカー開発を以下のように実施した。一般に超多型領域とされるSimple Sequence Repeat (SSR)領域を、ESTデータ(坂山未発表)より探索し網羅的にPCRプライマーを設計した。異なる地域集団由来の8株間を用い、71遺伝子座についてPCR増幅効率のスクリーニングを行い、効率の良いものについてキャピラリーシーケンサーによるアリルの決定を実施して多型の確認を行った。その結果、高PCR増幅効率かつ多型性を示す32の遺伝子座が確認された(平均アリル数:4.0個)。現在までにこれらの遺伝子座の内の13については地域集団内(河口湖の16個体)の個体間における多型性も確認している(平均アリル数3.6個,その他の遺伝子座については解析進行
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度で、研究全体に必要不可欠な野外生体サンプルを十分量収集することができた点、単藻培養株を確立した点、および集団解析に用いる多型DNAマーカーの開発に成功した点については当初の計画通り完了させることができた。しかしながら、それらを用いた集団解析/生理実験については予備的なデータを収集するに留まった。
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Strategy for Future Research Activity |
今度、収集した材料と開発した多型DNAマーカーを用いて、核ゲノム・オルガネラ両ゲノムについて、これまでよりも多くの領域を用いて自然選択検出のための配列解析を行う。これにより適応的なオルガネラゲノムの自然選択をより確かに検証し、また候補となる遺伝子領域を探索する。これらの配列解析と同時に、確立できた単藻株を用いた室内培養実験を行い、生態的2型間での生態生理的特性の違いを明らかにする。また、環境相互移植実験を行い、天然環境における適応能力の違いと室内実験の結果を実証する。さらに、交雑により生態的2型間のF1個体を作出し、上記の遺伝子探索で得られた候補領域の遺伝型と生理的特性の相関を調査することで、オルガネラゲノムが各環境に適応的であることの検証を行う。最終的に、候補遺伝子を改変した形質転換体を作出して生理的特性の変化を確認することで、適応遺伝子を特定する。
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