2013 Fiscal Year Annual Research Report
異なる環境に生育するシャジクモの生態的分化をもたらすオルガネラゲノム遺伝子の解明
Project/Area Number |
12J01993
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
加藤 将 神戸大学, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | シャジクモ / 生態的分化 / 種分化 / 自然選択 / 車軸藻類 / マイクロサテライト |
Research Abstract |
本研究の目的は、遺伝的に分化している淡水性大型緑色藻類シャジクモの生態的2型をモデルに、分化をもたらした適応的な遺伝子を探索し、種分化の初期段階を生み出す原動力である生態的分化を分子レベルで明らかにすることである。成果は、生物多様性を創出する分子基盤に理解を与え、また、他の植物に比べて蓄積の多くない車軸藻類の博物学的情報(分布、分類、系統など)にも貢献する。研究全体の計画における各解析や実験には、新規に採集するシャジクモの集団、ならびに過去の研究で得られている株の一部を材料として供する。このため、日本全国の様々な水環境において材料収集を実施している。全国からの車軸藻類の種同定依頼により譲渡されたサンプル(アウトリーチ活動の欄を参照)を含めると、合計187集団1062個体の収集することができている。ここで、採集で蓄積された車軸藻類の全国の標本データ・分布データは、愛媛県レッドデータブックならびに京都府レッドデータブックで新設される車軸藻類の項目に反映させ、種の選定・執筆にも携わった(分担執筆, 編集中 : 2014年発行予定)。また、分布や保全に関して特に重要だと思われた琵琶湖でのホシツリモの発見(車軸藻類の1種)については、同種内の遺伝的多様性に関する知見とともに、論文発表した。シャジクモの生態的2型の解析のために必要なDNAマーカー候補として、シャジクモのESTデータ(坂山ら, 未発表)よりマイクロサテライト領域を探索し、複数個体を用いた多型スクリーヒングを行った結果、これまでに32の多型領域が確認されている。これらを上記計画のDNAマーカーとして用い、集団遺伝学的解析を実施している最中である。また、同時にマーカー増幅PCRのmultiplexingを行う効率化を計っている。多型マーカー開発とmulttplexingについては、論文投稿を準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
多型解析に必要な野外サンプルを集団レベルで十分量収集することができ、分布情報を大幅な更新に成功した点、生理生態的実験に必要な株を確立した点、および集団解析に用いる多型DNAマーカーの開発に成功した点、そして解析の効率化(PCR multiplexing)については計画に準じている。それらを用いた多型解析/生理実験については新知見を得られるほどのデータの収集には至らなかった。次年度の計画の構成立て直しと共に、取得済みの上記成果に関する論文発表を優先的に行ってゆく。
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Strategy for Future Research Activity |
収集した材料と開発した多型DNAマーカーを用い、集団構造解析と自然選択検出のための多型解析を行う。これにより適応的なオルガネラゲノムの自然選択をより確かに検証し、また候補となる遺伝子領域を探索する。これらの解析と同時に、確立できた株を用いた培養実験を行い、生態的2型間での生態生理的特性の違いを明らかにする。また、環境相互移植実験を行い、天然環境における適応能力の違いと室内実験の結果を実証する。さらに、交雑により生態的2型間のF1個体を作出し、上記の遺伝子探索で得られた候補領域の遺伝型と生理的特性の相関を調査することで、候補遺伝子が各環境に適応的であることの検証を行う。
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