2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02011
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小渕 智之 大阪大学, サイバーメディアセンター, 特別研究員(PD)
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Keywords | 生物多様性 / 統計力学 / 逆問題 |
Research Abstract |
本年度は研究計画に基づき、生態系のモデル研究と逆問題の統計力学の整備に力を注いだ。具体的には生態系のダイナミクスをモデル化した方程式(レプリケーター方程式)の固定点をネットワークの形を変えながら解析した。単純な全結合の場合には、これまでにない網羅的な解析を行い、多体相互作用の強さに応じた、新奇なクロスオーバーを発見すると共に、準安定状態の数の評価を行なっている。また全結合ではなく疎なネットワーク上での解析も行い、自己相互作用の強い所で多峰的な個体数分布が出ること、ネットワークの結合数が大きくなると基本的に絶滅種が出やすくなるなどの新奇な知見を得た。これらは実際の生態系や社会的競争系などのデータの解析・解釈に有用となる可能性があり、また疎なネットワークでの解析は新たな解析手順を開発していることも有り、手法・データ解析の両面に寄与する。 逆問題に関しては、まず、幾つかの可解モデルを対象に解析を行い、逆帯磁率の計算を行った。この量は逆問題を特徴付ける重要な量であり、これを知ることで、問題の難易度や、アルゴリズムに要する時間・空間スケールを見積もることが出来る。これらの計算から逆帯磁率の特徴的長さスケールが短いことを確認した。これは逆問題において朗報であるが、一般的に成り立つとは限らない。より一般的な結果を得るためベクトルスピンモデルからの摂動論を用いた、一般のモデルに対する近似公式を導出することに成功した。現在はその近似の良し悪しを評価する方法を検討中である。次に、逆問題の一般的枠組みでどのような確率分布が許されるのかを明らかにするために、確率分布への制約の個数と可能な確率分布の体積の定量的な関係を解析した。既に最も非効率な制約の場合の解析(最悪評価)を終えており、定量的な結果と対応する相図を得ている。これにより、逆問題の一般的な限界と現在よく使われている最大エントロピー原理の限界を理解することが出来る。現在は最悪評価を超えた計算を行なっている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
生態系の研究は研究計画書の2年次の計画を既に先取りしている。逆問題の統計力学については逆帯磁率計算の部分が少し遅れている。総合して概ね順調に推移していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
当面は逆問題の確率分布の体積評価を中心に研究を進める。非典型な最悪評価ではない場合の評価および空間構造を導入した場合の計算を行うことが目的である。生態系に関しては研究の次の段階である、系がモジュール化、クラスター化している場合について現れる性質について議論する。
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Research Products
(7 results)