2012 Fiscal Year Annual Research Report
近代日本のキリスト教系保姆養成機関における保姆養成の実態と特質
Project/Area Number |
12J02067
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
永井 優美 東京学芸大学, 連合学校教育学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 教育交流史 / 幼児教育史 / 保姆養成史 / キリスト教教育史 / 保育者養成 |
Research Abstract |
本研究の目的は、近代日本の幼稚園教員養成の実態と特質を考察し、保育者観形成の過程の一端を明らかにすることであった。この目的のもと、本年度は数回の史料調査を実施しながら、博士論文「近代日本キリスト教系保姆養成史-アメリカ式保姆養成の導入と展開-」を執筆し、博士(教育学)を取得した。 「保姆」とは、幼稚園教員の歴史的名称である。本研究では、これまで着目されてこなかった近代日本のキリスト教系保婦養成の実態と特質を考察し、その歴史的展開を実証的に解明した。 まず、キリスト教系最初の養成機関である桜井女学校幼稚保育科において、キリスト教系保姆養成の基本的性格が形成され、同科は以後の保婦養成の先駆となったことを示した。その後、保姆を継続的に輩出した頌栄保姆伝習所において、養成のシステムやカリキュラムが整備され、キリスト教系保姆養成のモデルが提示されたことを明らかにした。そして、広島女学校保姆師範科は、アメリカで始まった進歩主義幼稚園教育運動の影響をいち早く受け、その理論と方法を段階的に導入し、日本における進歩主義幼稚園教育の発展に寄与したことを実証した。 また、キリスト教系保婦養成の特質として次の三点を指摘した。1、保姆養成独自の課程や学校における専門職としての保姆の養成がなされていた。2、その内容は、幼稚園理論(キリスト教理解に基づくフレーベルの幼児教育思想研究)と実践の双方に重点が置かれたものであった。3、宗教教育によって生徒の信仰心や保育職への使命感が涵養されていた。さらに、その特質が生じた二点の要因を提示した。1、キリスト教系保姆養成を担ったアメリカ人宣教師たちは、研究的志向を持った実践者および聖職者という共通する保姆像を有していた。2、宣教師たちから日本人保姆へ幼稚園教育情報の伝達がスムーズに行われたことをその経路、情報の内容と変質の点から解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初、最終目標としていた博士論文の提出を1年目で達成することができた。また、それと並行して、新たな事例の基礎研究を開始し、東京都立公文書館やシカゴ大学図書館において史料調査を既に数回行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同研究と同じテーマを設定し、桜井女学校幼稚保育科、頒栄保娚伝習所、広島女学校保姻師範科以外の事例、柳城保姻養成所、東京保姻伝習所、活水女学校保姻師範科、上田梅花幼稚園内保姻伝習所、青葉女学院保姻科、玉成保姻養成所、東洋英和女学校附属保姻養成所、平安女学院高等科保娚部、大宮保娚伝習所、東京保育女学院について調査を進めていく予定である。まず、各校において保栂養成に関する史料がどの程度残されているかを把握する作業から始めなければならないであろう。その後、これらの内のどの事例に着目するべきかについて検討し、同研究でと取り上げた事例と比較しながら、キリスト教系保婦養成史研究を深めていきたい。
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Research Products
(1 results)