2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
12J02077
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石本 健太 京都大学, 数理解析研究所, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 微生物 / ストークス流 / 繊毛 / 鞭毛 / 遊泳安定性 |
Research Abstract |
年度から研究を進めている流体中を遊泳する細胞運動に対する境界要素法を用いた数値解析手法を、より生物学的な問題へ応用することを行った。具体的には、境界付近を遊泳する細胞(I. squirmerモデル、II精子遊泳)へ適用し、力学系の観点からその遊泳安定性を調べた。 I. 昨年度から研究を進めてきた、変形により流体中を遊泳する数理モデル(squirmerモデル)のより簡単化されたモデルに対応するtangential squirmerモデルの解析を行った。微生物遊泳は大きく2つに分類され、それぞれpusherとpullerと呼ばれる。我々は、この2つの遊泳タイプと境界付近の安定性に対する一種の双対性を発見した。また、境界条件をno-slip条件とfree-slip条件の両方を解析した。その結果、no-slip条件では、生物の遊泳安定性は生物の形状や遊泳パターンによって劇的に変化し、この系にHopf分岐が普遍的に存在することを明らかにした。一方、free-slip条件の場合には、力学的に安定な固定点が存在せず、境界付近を安定的に遊泳することが出来ないことを示した。これらの結果は、境界やあるいは境界条件が微生物遊泳に対して非常に強い影響を及ぼすことを明らかにしている。 II. ヒト精子の遊泳を目標として、境界付近の遊泳安定性をI. と同様に解析した。また、ヒト精子のパラメータを用いたモデル精子の境界付近の遊泳に対して、精子鞭毛の運動が周期的であるとして、その運動を表す力学系のFloquet解析を行った。さまざまな形状や大きさの精子細胞の頭部に対して、解析を行った結果、実験的に正常な精子形状として認識されている頭部パラメータでは、境界の遊泳が安定的であることがわかった。一方で、観測されないような異常精子の形状パラメータでは、遊泳が不安定になることが分かり、精子の形状と遊泳安定性に大きな相関があることが見いだされた。これらの結果は、生物学的にも重要な成果と言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、摂動計算と数値解析を併用し、相補的に理解を深め、研究が着実に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
squirmerモデルを弱非線形のNavier-Stokes流へ拡大することを計画していたが、その簡単な場合がWang & Ardekani (2013)によって示された。しかし、この結果が誤りであることがKhair & Chisholm (2014)によって指摘され、正しい結果が得られた。しかし、いずれも、変形の最低次までの展開のため、変形の効果が正確に捉えられているとは言えない。今後は、Khair & Chisholm (2014)を参考に、変形の高次まで取り入れた解析を行いたいと考えている。
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Research Products
(4 results)