2012 Fiscal Year Annual Research Report
中海におけるサルボウガイ再生のための分子遺伝学的アプローチ
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12J02081
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
田中 智美 鳥取大学, 大学院・連合農学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | サルボウガイ / ミトコンドリアDNA / COI遺伝子 / 集団遺伝構造解析 / 生産構造 / 遺伝的多様度 / 中海 |
Research Abstract |
サルボウガイScapharca subcrenata資源の増産や管理に資する生態情報の蓄積を目的として、本年度はミトコンドリアDNAのCOI (mtDNA COI)遺伝子マーカーを用いたサルボウガイの集団遺伝構造解析に取り組んだ。 1.サルボウガイ生産構造の解明 日本8集団および比較解析のために韓国1集団を加えた合計9集団の合計225個体の成貝を用いてmtDNA COI遺伝子555塩基対を解析した結果、合計59種類の遺伝子型が出現し、日本と韓国は3種類の遺伝子型を共有していた。日本8集団の遺伝的多様度hは0.65~0.93であり、比較的高い多様度を保持していたが、韓国1集団のhは0.45であり、日本と比較すると多様度が低かった。集団間のペアワイズφ_<ST>およびAMOVA解析の結果、サルボウガイ集団は大きく3つのグループに分けられることが明らかとなった。 2.中海におけるサルボウガイ稚貝の再生産構造の解明 中海湖内9地点で天然採苗された2009年266個体および2010年220個体の合計486個体の稚貝を用いてmtDNA COI遺伝子555塩基対を解析した。その結果、2009年の各地点におけるhは0.86~0.95であり、中海で自然発生する稚貝の遺伝的多様性は高い水準にあった。また、地点間の遺伝子型共有率およびペアワイズφ_<ST>から中海湖内には湖北、湖南および湖心の3分散グループに分けられた。一方、2010年の各地点におけるhは0.67~0.99であり、2009年と比較すると特に湖南グループの遺伝的多様性が低下していた。以上の結果から、中海において、2009年には少なくとも3つの独立した生産構造が存在していたが、2010年には湖北グループ水域への湖心グループの分散範囲の拡大など生産構造の変化が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子マーカーを用いて、サルボウガイの国内における生産構造や中海における稚貝分散および再生産構造の経年変化等の生態情報を蓄積し、これらの研究結果を国際学会および国内学会で発表した。また、核DNAのマイクロサテライトマーカーは既報の12アリルセットを検討した結果、本研究に使用可能なアリルセットを3セット選定した。
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Strategy for Future Research Activity |
ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子マーカーを用いた解析を継続して、中海におけるサルボウガイの詳細な生産構造の解明および生態情報の蓄積を目指す。また、核DNAのマイクロサテライトマーカーは、既報のアリルセットを検討し、使用可能なアリルセットを増やす。なお、既に選定した3セットに関して精度を検討する。さらに、サルボウガイおよび同属近縁種の生態を比較解析することによりサルボウガイの生産構造をより深く考察できるだけでなく、遺伝学的知見の乏しかったサルボウガイの進化放散の解明にもつながることから東~東南アジアからサルボウガイおよび同属近縁種約250個体を採集して既に着手している。
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Research Products
(2 results)