2012 Fiscal Year Annual Research Report
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12J02130
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
中村 亜希子 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 特別研究員(PD)
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Keywords | 瓦当 / 三次元計測 / 渤海 / 古代東アジア |
Research Abstract |
研究初年度の実施予定事項は(1)日本におけるデータ収集・分析と、(2)海外研究機関との具体的打合せ及び分析の試行であったが、日中間の国際情勢の悪化により(2)の一部を延期し、代わりに3年度目に計画していた(3)紬薬や胎土の科学分析を開始した。 日本におけるデータ収集・分析では、まず近年刊行された渤海諸遺跡の報告書の分析検討を行い、渤海の造瓦変遷を通時的に再現し、成果を2013年2月の第14回北アジア調査研究報告会で発表した。その結果を踏まえて、東京大学が収蔵する渤海の瓦のうち、次年度以降に三次元計測を行う資料の選定を開始した。また、三次元計測の実践の面では、日本の古代瓦のうち、大和川原寺の川原寺式、及び奥山廃寺の8弁角端点珠紋の瓦当を選出し、三次元計測を行った。その結果、破片資料の三次元計測データを組み合わせることによって完形の瓦当紋様を正確に復元し、小片でも型(瓦当箔)の同定を行うことができることがわかった。特に前者では、箔の正確な復元によって、紋様の施紋方法やその単位を解明できるなど、瓦研究において三次元計測が効果的であることを確認した。 海外研究機関との具体的打ち合わせ及び分析の試行では、当初吉林省文物考古研究所をはじめとする中国の研究機関と調査の具体的な打ち合わせを行う予定であったが、日中間の情勢悪化のため、初年度は断念した。その代替策として、ロシア沿海州の渤海遺跡を調査研究するロシア科学アカデミー極東支部において、瓦や三彩器をはじめとする出土資料の調査を行った。 紬薬や胎土の化学分析では、渤海遺跡における唐三彩と渤海三彩を区別するために、三彩器の出土状況を整理した上で、まずは渤海と古代日本を結ぶ日本道上に位置したクラスキノ城址をはじめとする、ロシア沿海州出土渤海三彩器を調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国際情勢の急激な悪化により、2012年度は予定していた中国における調査を断念せざるを得なかったが、その代替策としてロシア沿海州における渤海遺跡出土品の調査を行うことができたため、研究全体としてはおおむね順調に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に実施できなかった中国での調査を行うことができるかは、今後の日中関係の改善具合にもよるが、仮に中国において三次元計測等の実施が困難な場合は、東京大学考古学研究室をはじめとする日本の研究機関が収蔵する渤海瓦の分析・データ収集を充実させることによって補おうと計画している。
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Research Products
(5 results)